青眼の白龍

タイムループ 7回殺された男の青眼の白龍のネタバレレビュー・内容・結末

1.5

このレビューはネタバレを含みます

タイムループを主題にしたSFサスペンス作品。死ぬたびに蘇る記憶喪失の主人公が仮面の男達に何度も殺されながら真相を探ろうとする話。記憶喪失ものとループものを一緒くたにした結果、どっちつかずの中途半端な作品となってしまった印象だ。

脚本の粗を挙げるとキリがないが、主人公に共感できない点が大きい。まず危機感がない。命を狙われていることが判明した後も、蘇る度にしばらくベンチの周りをウロウロして時間を無駄にしている。追手が来ているのに全力で走ろうとしない。暗闇で襲われる場面でも、わざわざマッチを擦って自ら敵に居場所を教えたりと、非常にストレスが溜まる。ループ×デスゲーム系ということで「これから先に起こる出来事を自分だけが知っている」という利点をどう活かすかが鍵になるのかと思いきや、最後まで「もう蘇りたくない……」と不満ばかりで苛々した。四回目のループでバイツァダストを倒した川尻早人君を見習ったらどうだ。

さらに、主人公の正体は元殺人鬼だったというのも観客の共感を奪う一因であろう。いくら悔いているとはいえ、少年の目の前で両親を銃殺した集団のボス?だったとわかれば「この主人公に助かってほしい」とは思えない。しかも元殺し屋のくせに敵を甘く見て何度もしてやられている。ごく普通の小学生なのに殺人鬼相手に立ち向かった川尻早人君を見習ったらどうだ。

本作のオチはよくある「黒幕は記憶喪失の自分だった!」というものだが、意外性だけを求めて整合性を放棄する典型例といわざるを得ない。普通に自殺すれば済む話なのに、わざわざ部下に自分を殺してくれと素性を隠して依頼する意味がわからない。また仮面の男達は普通に市街の人混みで発砲して無関係の人々を大勢巻き添えにしているが、プロの殺し屋が白昼堂々と発砲するだろうか。どうして警察が駆けつけないのか。薬物が登場した時点で仮想現実オチか妄想オチかと疑っていたが、何も考えず街中でバンバン撃ってたらしい。笑える。

何より、肝心のループについても何の説明もないまま終わる。誰もいないベンチの画と独白のせいでなんとなく良い終わり方のように見えるが、結局何故ループしていたのか不明だし消化不良この上ない。神様のイタズラでも特異体質でも何でも良いが、もう少し深く描写してほしかった。残念。