エソラゴト

さらば青春の光のエソラゴトのレビュー・感想・評価

さらば青春の光(1979年製作の映画)
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今回、公開40周年を記念してデジタルリマスター版が再上映されるということで、劇場まで足を運んでみました。


容姿も精神性もクールでモダンでスタイリッシュを標榜とし、毎週末にはクラブでドラッグをキメて朝まで踊り明かすというライフスタイルを彼らは実践していました。(似たような要素をS.キューブリック作品の『時計仕掛けのオレンジ』で見受けられますが、調べてみるとやはりアンソニー・バージェスの原作はこのモッズ・ムーブメントからの影響があったとの事)

青春時代、誰もが通るであろう将来への不安や焦燥感、社会への怒りと自分自身への苛立ちー。ファッションや音楽を通じて人との繋がりや関係性を肌身に感じ、親や大人達からの強硬な態度や激しい叱責等で社会の掟や厳しさを知る。そんな今作の副題でもある"A WAY OF LIFE"ー、人生の大人の階段を昇る過程をモッズというムーブメントを通して瑞々しく描いています。

劇中、出番はさほど多くありませんが一際異彩を放つのは当時バンドデビューしたての尖りまくったスティング。(奇しくも先週来日ライブを観たばかり)スラッとした長身、金髪と鋭い眼光で同じモッズ仲間にも一目置かれる存在で、ブライトンでの暴動でも派手な大立ち回りを演じジミーと共に警察車両(!)にぶち込まれる勇姿と裁判での太々しい立ち振る舞いは存在感抜群。その後ホテルのベルボーイとして社会の歯車の一員に収まる凜とした姿と一切の感情を排した無表情にも痺れます。

この時代の「怒れる若者たち」を描いたとされるブリティッシュ・ニューウェーブ作品や前述の『時計仕掛けのオレンジ』、1990年代の『さらば青春の光』とも呼び声高い『トレインスポッティング』も再度観たくなりました。



〈余談〉
個人的には今作発表時に再燃した所謂ネオ・モッズ世代のザ・ジャムに影響を受けたのでポール・ウェラーにとても強い憧れを抱いておりました。学生時代にはバイトをしてヴェスパを購入しモッズコートを羽織り街を疾走していたなんて時期も…。劇中のようなド派手なデコレイトは流石に施しませんでしたが、様々な面で実用的ではなく物凄く乗り辛い代物だった為僅か数年で手放してしまいましたが…。

また今作を鑑賞するにあたってネットで検索をかけると真っ先に某お笑いコンビが出てくることに少々憤慨しています…。