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台湾萬歳のumisodachiのレビュー・感想・評価

台湾萬歳(2017年製作の映画)
3.4
『台湾萬歳』鑑賞。酒井充子監督による【台湾3部作】の3作目。

台湾台東縣にある成功鎮は、原住民族と漢民族がおよそ半々の割合で暮らしている。漁業や農業の町で、漢民族や日本人が移住してきて今のような町の形になっていった。

『台湾萬歳』では、アミ族やブヌン族といった原住民の方々や、地元の漁師などの生活に徹底的に密着している。日本人から伝えられたという「突きん棒漁」の様子や、夜中の鹿狩りなどに同行し、彼らがどんな風に日々を過ごし、どんなルーツを持ち、なにを思っているのかを淡々と描写する。

親日家というイメージが強い台湾の人々だが、50年に渡り日本の統治下にあったという事実は、当然のことながら様々な出来事を内包している。

日本の統治や戦争が、彼らの日常をどのように変えたのか、何をもたらし、何を奪い、今にどんな影響を与えているのか。その中で、変わらないものは何なのか。

激動の歴史を、【生活】という観点から見つめたドキュメンタリーだといえるだろう。

『台湾萬歳』では、魚や動物を捌いたり、食べたりするシーンが頻繁に登場する。その度に私は、激動の時代の中で、彼らが懸命に生き、命を繋いできたのだという、当たり前なのだが忘れがちな事実を実感した。食べて、生きる。歌う。笑う。

私たちだって同じだ。誰かが育てたり仕留めたりしたものを、食べて、生きる。命を食べて、命を繋いでいる。彼らが丁寧に丁寧に獲物を捌き、祈る姿は、そんな当然のことを思い出させてくれるような気がした。

「台湾の人たちは親日だから」

そんな簡単な言葉で終わらせてしまいがちだが、我々が知らなければいけないことはもっと多い。もっと複雑なのだ。知らねば。もっと、学ばなければ。よりよい未来のために。
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