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ローラーボールのmidoredのレビュー・感想・評価

ローラーボール(1975年製作の映画)
3.5
戦争も貧困もなくなった未来社会で人々が熱狂するのは野蛮なスポーツ「ローラーボール」だった。そのスター選手であるジョナサンは突如オーナーから引退を命じられる。チームも自分も絶好調なのになぜ辞めねばならないのか。

何もかもが完全に管理された世界を描くスポーツ・ディストピアSF。

SFでスポーツというのは珍しいですね。冒頭から20分間リアルなゲームシーンが延々と続くので退屈しました。ホッケーとアメフトとクィディッチが混ざったような格闘技に近いスポーツで、これ自体なかなか迫力はありますが、なんというか「普通」なのです。そりゃ未来世界にもスポーツくらいあるわなと。それが物語が進んで意味が分かると途端にゾッと来る。上手い仕掛けです。

何度も変えられるルール、理不尽なゲーム、それに従うしかない選手たち。これは架空の物語ではありますが、あまりにも見慣れた風景で憂鬱になります。

ゲームの真の勝者は選手ではないし観客でもない。ゲームを作った者なのだと。昨今SNSでも喧しい文化戦争もまさにこれでしかないなと、死者累々たるローラーボールのフィールドを見ながら思いました。

管理社会に生きる人間の無力感と怒りが爆発するラストにあまりカタルシスがないのもまたリアルです。

ところで、東京チームと戦うシーンはトンチキJAPANの塊で、メガネに「チビ」にイエローユニホームと、今ならアジア人差別的と言われる表現に満ちていて興味深いものがありました。多かれ少なかれ、欧米人は今もこんな認識なんだろうなと。
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