MasaichiYaguchi

リンキング・ラブのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

リンキング・ラブ(2017年製作の映画)
3.5
荻島宏さんの同名ネット小説を「AKB48」の田野優花さん主演で金子修介監督が映画化した本作は、バブル崩壊直後の1990年代初頭を舞台にした青春SFコメディ。
この作品は、キャラクターを含めた様々な設定や展開はロバート・ゼメキス監督の代表作の一つである「バック・トゥ・ザ・フュ―チャー」を“確信犯”的に準えていて、それの金子修介監督版と言っていい。
違いと言えば、バブル残滓の日本の世相や若者文化、ファッションを色濃く打ち出していて、既に結婚して“若者”を卒業していた私にも懐かしく当時が蘇ってくる。
「バック・トゥ・ザ・フュ―チャー」では舞台となった1950年代のアメリカンポップスやロックが効果的に使われていたが、本作では当時の歌謡曲も登場するものの、中心となるのは何と「AKB48」のヒットソングの数々。
ある意味、このヒットソングの数々が本作の“肝”となっていて、物語において重要な役割を果たす。
二階堂ふみさんに容姿も雰囲気も似ている「AKB48」の田野優花さんはさておき、石橋杏奈さん、益田恵梨菜さん、樋井明日香さん等の若手女優がこれら「制服が邪魔をする」「Everyday、カチューシャ」「フライングゲット」「恋するフォーチュンクッキー」の歌や振り付けを“完コピ”していて見惚れてしまう。
本作は、「恋するフォーチュンクッキー」の歌詞「未来はそんな悪くないよ Hey!Hey!Hey! ツキを呼ぶには笑顔を見せること」にあるように、バブルが弾けて坂道を転げ落ちるような社会にいる若者たちに対し、自ら未来を切り開くようにと鼓舞しているように見える。
そしてアベノミクスによる上辺だけの好景気にいる我々に対するエールにもなっているような気がします。