回想シーンでご飯3杯いける

Nila/ニラの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

Nila/ニラ(2016年製作の映画)
3.5
小雨が降る深夜のインドの街を走るタクシー。インド映画と言えばバイクや自転車でごった返す賑やかな街のイメージしかなかったけど、ここで描かれるのは誰もいない静かな街。それがとても絵になっていて、一気に作品の世界に引き込まれる。

タクシーの運転手として働く青年がお客さんとしてたまたま乗せたのは、かつて淡い恋心を抱いていた幼馴染の女性。彼女は青年が誰であるかを悟った後、すぐに打ち解けるのかと思うと、何やら訳ありなようで、言葉少ないまま窓の外の風景を眺めている。この時の台詞「port(港へ)」の発音がめちゃくちゃ色っぽい。

やがて、彼女から運転依頼の電話が入るようになり、2人は少しずつ距離を縮めていくが、男は現在の彼女が抱える秘密を知って、葛藤に苛まれる。

登場人物はほぼ2人のみで、恐らくはインディ系の制作なのだろう。同じタクシーを題材にしたジム・ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」にも近い雰囲気を持つ、とても趣きのある作品だ。主演女優もとても印象に残る人で、夜風になびく長い黒髪とサリーが美しい。映画大国のインドらしく、映画デートシーンがあるのも良い。

Netflixはアジア系の日本未公開作品がかなり豊富に揃っているので、良作を探すのがとても楽しい。タクシー運転手の青年が最後に取った行動が僕には納得いかず、そこだけはとても残念だった。