むっしゅたいやき

白い鳩のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

白い鳩(1960年製作の映画)
5.0
映画を渉猟していると、偶にジャケットとタイトルから、『多分この作品は、自分にとって大切なものとなる』と観賞前から分かる作品が有ります。
私にとってはマイベストにも挙げている中の数作がそれでありますが、本作も鑑賞前からその匂いに包まれていた作品でした。

チェコ・ヌーヴェルヴァーグで著名な、フランチシェク・ヴラーチル監督作品。
原題は『Holubice(鳩)』。

物語は伝書鳩レースに参加した白い鳩を通し、バルト海沿岸に住む兄妹の愛情と、遠く離れたプラハに住む少年の更生を描いたものです。
自由を思わせる少女の住む海辺の横の線と、檻を思わせる少年の住むアパートの垂直の線、この対比が見事です。

その構成は圧巻で、まるでフレスコ画の様でもあり、ひとつひとつの美しいエピソードが緻密に組み合わされ、それでいて全体として鮮烈な印象を与えています。

会話が僅少な作品では有りますが、話しはシンプルな物であり、かつ少年少女の表情での表現が豊かな為、理解に苦しむ様な事はありません。
少年と同じアパートに住む芸術家が、言葉は少ないながらも優しく、少し離れて見守りながら教え導く様が印象的でした。

76分と云う短尺の小品ですが、今後も幾度となく見返す事になりそうな、とても豊かな作品です。
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