豚肉丸

ありふれた話の豚肉丸のレビュー・感想・評価

ありふれた話(2009年製作の映画)
4.3
下半身不随になった青年と彼を介護する男のお話

アノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督の長編デビュー作。映画は殆ど一室の室内劇に終始して閉塞感が漂い続けるが、彼の意識が宇宙に飛んで宇宙の誕生を眺めたり自然と宇宙の移り変わりを夢想したりなど、現実での閉塞感とは対称的に映画の空間は何処までも広がりを見せる。

本作は時系列の解体が激しい。一室の空間内で終わる日常を描くだけの映画ではあるものの、結果を先に提示してその後に結果に至るまでの流れが提示される構成で再構築されているため、流れや今何が描かれているのかがかなり掴みづらい。本作を象徴する宇宙の要素すら唐突に挿入されたかと思いきや唐突に終了するため不親切にも感じる一方、循環構造のようにも見える本作の編集は映画が表す宇宙の捉え方を表しているようでもあって面白い。未来、過去と言ったような時間の流れすら否定して今日この時しかないのならば、といった会話がとても印象的。

案の定あまり理解はできなかったものの、しかしアノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督の映画は時間と時空の流れに自らが巻き取られているような感覚に陥って面白い。『暗くなるまでには』に繋がる映画としてもなかなか良かったです。
豚肉丸

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