KnightsofOdessa

Woodshock(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Woodshock(原題)(2017年製作の映画)
5.0
[母を殺して、私は世界に絶望した] 100点

またもA24から超絶大傑作。ファッションブランド"ロダルテ"を創設したデザイナー姉妹ケイト&ローラ・マレヴィが、トム・フォードに続けと言ったのかは知らんが、同社のミューズであるキルステン・ダンストを主演にガイ・マディン的なパラノイア映画を作ったのだ。しかもA24で。私はこういう陰鬱な映画が大好きなんだが、実験的な手法が多く、ガイ・マディンやフサーリク・ゾルタンみたいなアヴァンギャルド映画大好きな人間に向けた作品であることは確かであるし、実験映画作家にありがちなスノビズムを感じないわけでもない。しかし、それでも十分魅力的だと思うし、そもそも真顔が陰鬱そうなキルステン・ダンストを置いとけば陰鬱な映画を作れるというのは、ラース・フォン・トリアーが『メランコリア』で証明したわけだし、私はあの映画も大好きなのだ。

母親の安楽死に関与した主人公テレサは田舎の家を相続し、恋人が反対する中そこで暮らすことに固執する。大切な人を失った苦しみから虚無へ堕ちていったテレサは、地元の友人で安楽死用の麻薬を売ってくれたキースの大麻ショップで再び働くことにするが、家に引きこもって陰鬱に過ごすことが多くなっていった。

露悪的なネオンライトや二重露光を多用した映像は虚無感・絶望感による"この世の地獄"を示し、逆にレンズフレアを使った映像は"世界に微かに存在する美しさ"を表現している。グロテスクなまでに誇張されたこれらの映像の間に、テレサの時間が存在し、実世界と空想・妄想・夢がテレサを介して繋がっていることを示している。また、彼女が常用する麻薬によるトリップ効果もこれらの表現を用いた上で、森に対する恐怖や興味、サブリミナル的な場面転換、などが加わり、ファッションデザイナーっぽい華やかな世界が完成している。というか、そもそもダンストの顔に"死"そのものが貼り付いたみたいになってて、映画の説得力が格段に上昇しているのも忘れてはいけない。

キースの店に自殺を望む老人がやって来るが、テレサは間違えて別の青年ジョニーに自殺用麻薬を売ってしまい、彼を殺してしまう。虚無感に罪悪感が加わり、全ての感情は絶望に取って代わる。彼女は安楽死用の大麻を五本用意して自殺を図ることにした。
一本目、二本目、三本目。彼女は死ねない。どんなトリップをしても必ず目覚めてしまう。恋人は彼女を心配するが何もしてやれない。テレサは庭に柵を立てる幻覚に怯え始める。
四本目。テレサは老人の家に行き、図らずも彼の死を看取ることになってしまう。恋人と喧嘩してキースの家に流れ着いたテレサは、恋人の助けを与えようとするキースを拒絶し殺す。
五本目。森の中でテレサは最後の一本を吸い、自然に取り込まれるように空へ昇っていく。

確かに100分やるには長いし、それはガイ・マディンにも共通していた。それを補って余りある"絶望の具現化"には心が重くなった。個人的にまともな役やってるピロウ・アスベック観たの『シージャック』以来だった。あと、トリアーもそうだったけど、ダンストの巨乳を出さないわけにはいかなかったようで、不必要におっぱいを強調したシーンが幾つかあった。別にいいんだけどね。
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