blacknessfall

マインドホーンのblacknessfallのレビュー・感想・評価

マインドホーン(2016年製作の映画)
3.3
スパイ時代に嘘発見器付き義眼を潜入国に移植されたマインドホーンは潜入国から決死の脱獄に成功しマン島でハイテク刑事として悪を倒していった。80年代イギリスで一世を風靡した人気ドラマ『マインドホーン』の主演俳優リチャード・ジーンクロフトはその国民的人気を背景に第二のバート・レイノルズのキャッチと共にハリウッドに進出するが失敗、以後はイギリスの芸能界の片隅に埋もれ鬱屈していた。
そんなの時にマン島で連続殺人が事件が起こる。犯人は「マインドホーン刑事と話をさせろと」警察に要求してきた。警察はリチャードの犯人と電話で会話することを依頼する。リチャードはカムバックの話題作りになると快く引き受けるのだが…

所謂、落ちぶれたスターを使ってその落日ぶりをギャグにしつつ過去の失敗にケリつけ奮闘し、かつての耀きと矜持を取り戻す笑えて泣けるヒューマン・コメディ。

偶然なんだろうけどケイジの『マッシブタレント』に似てた。連続殺人の犯人は精神障害があってドラマのマインドホーン刑事が実在してると思ってるんだけど、テレビであることは理解していて(この認識、不思議だよな)、ドラマの衣装を手作りしたり、マインドホーンのノベルティグッズを大量に所持している。警察へのメッセージにドラマのエピソードを引用するほどのマインドホーン・マニアックなんだよ笑
自分の大ファンが悪人でその逮捕に協力させられる展開はまんま『マッシブタレント』で、しかも、悪人が実は悪人ではなく悪に利用されて傀儡にされていたというオチまで一緒なんだよ笑
マインドホーン・マニアの犯人はマン島の実力者によって殺人犯に仕立てられていた。
それを知ったマインドホーン(リチャード)は犯人(冤罪)とかつての仲間や元妻と共に真犯人を追い詰める。
この過程で自分が再ブレークすることしか考えてない自己チューでかつての栄光を鼻にかけた尊大さで痛々しいおっさんに成り果てたリチャードが己を見つめ直し再生していく展開はハートフルでグッくるものがあった。
全編を通して繰り出される芸能界あるあるギャグも秀逸なものが多かった。オーディションでケネス・ブラナー(本人だった笑)に親しげ昔話をするもブラナーは「知れねぇよ、あんなの」とスタッフにこぼす。見くびっていた脇役が現在は大成功していて再会して復讐とばかりに小バカにされる。こういうギャグをイギリスらしい苦くクールな演出で撮っていて、アメリカのコメディとの違いも感じた。下ネタも控えめで抑制が効いてるんだよな、アメリカと比べるとセス・ローゲンみたいにオーバーアクトしないというか。

しかし、その抑制とクールなとこが邪魔してクスッとはなるけど、大笑いできる場面がなく、それが残念だったな。
blacknessfall

blacknessfall