半兵衛

新日本暴行暗黒史 復讐鬼の半兵衛のレビュー・感想・評価

新日本暴行暗黒史 復讐鬼(1968年製作の映画)
4.1
村社会の構造の描きかたは大島渚っぽくもあるけれど、オブラートに包まずにそんな社会で差別され妹への暴行をきっかけに爆発するさまをド直球に描くのはまさに反骨の作家・若松孝二の真骨頂。冒頭での暴行場面をはじめ、主人公への差別のやり口があまりにも醜悪すぎて見てるこちらまで気分が滅入るが、その分津山三十人殺しを彷彿とさせる殺戮シーンの数々に妙なカタルシスが。

通常この手の映画だと殺戮場面に監督独自の美学がついてくるが、若松監督はそんなものを一切やらない人なので暴力とバイオレンスが一直線に観客にもたらされるためちょっと見る人を選ぶかも。それでも差別される人間の慟哭の生々しさが心に突き刺さる作風が胸に沁みて私は何故か主人公に共感してしまった。

女性を殺すとき乳首や性器をえぐる描写がかなりグロいが、複数の村人に暴行され発狂した最愛の妹の痛みを分け与えるための行為だと思うと切ない。

村人を殺し終わったあと呆然とする主人公で終わるラストが苦い。

主人公の青年を若い頃の吉澤健がいつもの飄々ぶりをかなぐり捨てて熱演、その顔立ちといい髪型といい綾野剛や松田優作に似ていて繊細さと狂暴さを兼ね備えた主人公にぴったり。

エロ映画では絡みや女性の裸で使用されるパートカラーを、発狂した妹が正気に戻る場面で使うセンスが素晴らしい。そしてそのあとの悲劇が一層物語を重くする。
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