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A Leap in the Dark(英題)のイワシのレビュー・感想・評価

A Leap in the Dark(英題)(1980年製作の映画)
4.1
仏語無字幕観たので話はさっぱり不明だが、アヌーク・エーメが狂気から寛解していくのと反比例してミシェル・ピコリが狂気に侵食されていく感じか。子どもたちが部屋を駆け回る幻影が2度あるが、最初の方でピアノを弾く子の背後でソファへ身を投げる子のあの跳躍が素晴らしく鮮烈。

ファーストショットの窓が映った瞬間からミシェル・ピコリが身を投げることは疑いようもないが、その瞬間に至るまでのワンカットの凄さ。アパルトマンを虚脱しながら移動し幽霊のように時折映り込み、かと思えば突如部屋を案内するかのようにカメラに視線を向け、そして飛び降りる。

ラストの予行練習のようにあらゆる物を投げて落とすミシェル・ピコリだが食べかけのバナナを廊下へ放り投げるシーンが特に良い。バナナは床を滑り画面奥で止まり、ピコリは最初そのまま無視するが思い直したのかバナナを拾いあげ、ゴミ箱に捨てる。ここまでをワンカットで撮られてる。

河向こうの係留船でのパーティを見て叫び声をあげ、石か何かをひたすら投げ続けるミシェル・ピコリ。その声は音楽にかき消されまったく聞こえないのだが、ここは『アメリカン・スナイパー』の新生児室でのシーンを思い出した。

ミシェル・ピコリは映画が始まって1秒で窓から見るものが死体なので(ある意味円環構造? 『やさしい女』?)、飛び降り後の場面のアヌーク・エーメのいる部屋の窓から見える海との対比がバチバチに効いてる。エンドクレジットもベッドですやすやエーメの上に流れるので兄妹の末路の差が余りにも激しい。でも、兄妹が最期の別れになる前の会話シーンの切り返しはなんかやさしかった。
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