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それからのakrutmのレビュー・感想・評価

それから(2017年製作の映画)
4.2
小さな出版社の社長と社員の不倫を軸に、そこに予期せずに巻き込まれていく新たに採用された社員を描いた、ホン・サンス監督のドラマ映画。

ほとんどが会話で構成されるといういつもの会話劇ではあるが、ちょっとしたストーリー性もあるので、他のホン・サンス作品(と言ってもまだ3作しか見ていないが)よりは娯楽性は高いかもしれない。キム・ミニが不倫の当事者ではなく、社長の奥さんに不倫相手と間違われて殴打されてしまうという、意図せずに巻き込まれる傍観者を演じているのが、本作の特徴と言える。哲学的な会話を社長にふっかけたり、雪が舞う夜のタクシー内で自身の孤独にどこか誇らしげな表情を浮かべたりと、許されぬ恋愛をどちらかと言うと否定的な見方をする女性を演じさせている点に、『夜の浜辺でひとり』で不倫関係を認めた二人の余裕とか、批判者への冷笑が見て取れる。

もうひとつ、モノクロ映像を使ってまで印象的に描いているのが、孤独感である。どの登場人物も孤独であり、愛し合っている二人でさえも、不倫がゆえに孤独や寂しさを感じている。そんな心情が、出版社の社長を演じるクォン・ヘヒョ、その不倫相手を演じるキム・セビョク、社長の妻を演じるチョ・ユニという出演者たちの何気ない演技でじっくりと表現されている。

・キム・ミニ(が演じる人物)に対して綺麗な人だというような褒め言葉が必ず入るのが、何気なくすごい。

・社長とその妻を演じたクォン・ヘヒョとチョ・ユニ(同姓同名のもっと有名な女優がいて紛らわしく、間違って紹介している記事も少なくない)は実生活でも夫婦である。

・相変わらず、ビデオ撮影の初心者が使うような単調なズームが印象的。
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