グラッデン

ジュピターズ・ムーンのグラッデンのレビュー・感想・評価

ジュピターズ・ムーン(2017年製作の映画)
3.8
空中に浮遊する能力を持つシリア難民の少年と、彼を手助けする社会を彷徨う男性の物語。

空中を浮遊する能力の存在自体はSF的な要素が強くありますが、浮遊した少年が空中から見下ろした世界こそ現実と地続きの世界であることに重みを感じました。

本作の舞台となるハンガリーをはじめとする欧州各国が実際に直面する難民問題、それに付随する混乱と差別。
前日に見た『デトロイト』で見せられた当時のアメリカの歪んだ構図が、21世紀になった現代に展開されてることに軽く絶望感を感じました。そうした社会背景を下地にして、SF的要素、宗教的価値観、そして登場人物の感情が絡み合う興味深い作品でした。

だからこそ、空中を浮遊する少年というのは、空中から「社会を俯瞰する存在」として描かれていたように感じました。だからこそ、本作における構図が単純な善悪によるものではなく、様々な背景が複雑に絡み合ったものであることがよく伝わりました。

少年の空中浮遊のシーンが素晴らしかった。スローモーションと優雅なサウンドともに映されるドローン撮影を彷彿とさせるカメラワークともにスクリーンで観る価値大。