むらむら

2重螺旋の恋人のむらむらのレビュー・感想・評価

2重螺旋の恋人(2017年製作の映画)
5.0
変態しか出てこないので、「二重螺旋の“変人”」の方が腑に落ちる、フランス発エロチック・スリラー。

「聖なる鹿殺し」同様、いきなり内臓(女性器)のドアップで始まり、「ここからは普通じゃありませんよー」と教えてくれる親切設計の変態映画である。

原因不明の腹痛に悩まされるクロエ(マリーヌ・ヴァクト)は、検診した婦人科医(冒頭のシーン)の勧めで精神分析医ポール(ジェレミー・レニエ)を訪ねる。ポールと恋に落ちたクロエは、街で偶然、ポールそっくりの男ルイを目撃。ルイはポールの双子の兄だと言うのだが、次第にクロエは、危険な香りの漂うルイに溺れていく。見方によっては「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」的な作品かも。

ただ、この主人公のクロエ、かなり妄想癖があって、現実と妄想の境界がとっても曖昧。

バイトで美術館の監視係やってるのに、仕事中はほぼ居眠り。ポールから電話かかってきたら、美術館の中で電話始めちゃう。完全に一般社会人としては破綻してて、エロエロな妄想にだけ、蒸気機関車のように邁進していく。こんな同僚いたら、一発でクビにしたいわ……。

映画では、鏡や双子をモチーフにした、妄想か現実か分からない不穏なシーンが続く。展開の流れも全くよく分からない。

最初は強引なルイにレイプまがいの行為をされて受け身だったクロエ。延々と攻められているうちに、一転攻勢するクロエ。さて、怒りが爆発して、ルイに逆襲するかと思いきや、何故か怒りの矛先は、善良なポールと向かい、ポールにサディスティックな行為を強要する。しかもさらに、ポールはルイとホモり始めたりして……後半はエロの幕の内弁当みたいな状態に。

クロエの腹痛の理由が明らかになるシーンに至っては、「えーっ、ここでそんな演出いるか!?」という描写にも絶句。この監督、一体、何がしたいんだろう……。

理解しづらい部分や、アブノーマルなエロシーンも多めなので、一般にはオススメしないけど、「女性セブン」のレディコミ大好き!って層の人にはバッチリ、ハマるんじゃないかな。なんか、「フランスは変態の本場である!」という監督(フランス人)の宣言というか、意味の分からない誇りみたいなのを感じる作品だった。

ただ、「フランス書院文庫」読んでたと思ったら、いつのまにか「竹書房ラブロマン文庫」の「田舎妻の淫ら祭り」とか「つゆだくお届け便」になってる感じもあるし、俺的には、なんか監督の過剰なコダワリが見えて面白かったです。
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