紫陽花

ラブレスの紫陽花のレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
5.0
離婚予定の夫婦のもとにいる1人息子を両親のどちらも引き取りたくない理由は、各々のパートナーとの熱愛に夢中で、新生活を邪魔されたくないからという理不尽そのものでした。その会話を聞いて息子は、声を上げずにひっそりとドアの陰に隠れて号泣。両親との信頼関係が全くないことが容易に見て取れる行動。その後、失踪してしまった息子を探す両親に警察の協力は全くなく、民間の団体に助けてもらいながら捜索するうちに、これまでの一家の真実が徐々に明らかになってきて…。
息子はストーリー前半に失踪するので登場シーンは少なくて、森の中を通り学校から帰宅する、自室から見える景色を寂しそうに見ている、号泣する、どれをとっても可哀想なシーンばかりで胸を締め付けられます。
当然ですが子供は親を見て育つので、反面教師の部分ももちろんありますが、負の連鎖で知らず知らずのうちに同じようにしてしまうものなんだと。この両親も夫は天涯孤独で、妻の母親は孫が失踪したというのに謎の怒りを爆発させていました。つまり、夫婦はそれぞれ親の愛情を知らずに育ってしまったので、子を愛するということがどういった行為なのか分からないまま親になってしまった、本当は大変気の毒な人たちでした。
唯一の救いは、疲れ果てるまで息子を探し続け、失踪後からラストシーンまで夫婦の表情から犯した罪の重さを感じ取れたこと。皮肉にもこの期間が夫婦にとって最もお互いの気持ちを共有できたのかもしれないですね。