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女王陛下のお気に入りのkojikojiのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.0
No.1597
2018年 アイルランド🇮🇪/イギリス🇬🇧映画

 ヨルゴス・ランティモス監督作品は初鑑賞。すごい映画だった。久しぶりの当たり🎯
 
 同じみのイギリス王室もののつもりで観たら、一味も二味も違う作品で、面食らってしまった。もちろん予備知識なし。
 
 主演のオリヴィア・コールマンがアカデミー賞主演女優賞を受賞していることも知らなかった。しかし、そうだろうと納得する演技だった。

 18世紀初頭、フランスとの戦争下にあるイングランド。女王アン(オリビア・コールマン)の幼なじみレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)は、病身で気まぐれな女王を動かし絶大な権力を握っていた。
 
 そんな時、没落した貴族の娘でサラの従妹にあたるアビゲイル(エマ・ストーン)が宮廷に現れ、アン女王の侍女として仕えることになる。サラはアビゲイルを支配下に置くが、一方でアビゲイルは再び貴族の地位に返り咲く機会を狙っていた。
 戦争をめぐる政治的駆け引きが繰り広げられる中、女王の「お気に入り」になることでチャンスをつかもうとするアビゲイルだったが……。

 サラとアビゲイルの女の戦い。二人は実在の人物だが、この映画の二人の戦いは創作のようだ。これがもし真実としても、表に出てくるはずはない。

 主人公のアン女王は痛風で、17人の子供を失った心を癒すため17羽のウサギを飼っている。精神的に不安定で、それを癒すように、サラとは同性愛の関係、しかも完全に彼女の支配下にある。
 
 よくまあ、ここまでアン女王を創作したと思うが、彼女のそうした病的な一面がこの物語を生み出す要素になるのだから、納得もするのだ。
 
 それにしてもオリビア・コールマンはアン女王の苦悩の深さを見事に演じていて、凄いとしか言葉が出ない。最初に彼女が登場した時は「なんだかこいつ!」ときっと皆さんも思うに違いない。それが物語が進むにつれて、彼女の苦悩とその悲しみが見えてくるから不思議だ。
 
 この女王の「お気に入り」になるための二人女優の火花がすごい。贔屓のエマはもちろんいいのだけど、この映画ではレイチェル・ワイズも負けてはいないから見ものだ。
 
 例えば、レイチェル・ワイズがびっくりするぐらいエマを殴るシーンがある。これも凄まじいのだが、殴られた直後のエマの顔を見てほしい。女優とはまさにこれだ!と思わせる演技を見せる。

 この映画、三人の女優の演技だけでも観る価値ありだ。
ラストのオリビア・コールマンの演技、表情を決して見落としていけない。この表情の深さ、凄いから。
 
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