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女王陛下のお気に入りのhasseのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
3.9
○「梅毒持ちの兵士に身体を売ることになったら、私は道徳に従ったことを後悔する羽目になる」(アビゲイル・ヒル)

『哀れなるものたち』の前に未鑑賞の本作を。
女王の寵愛を奪い合う宮廷ドラマとして普通に面白い。サラが言う通り、二人の目的は異なり、サラは国政を意のままに操るため、アビゲイルは貴族階級の特権を取り戻すため。中盤からの女王への愛の「演技」合戦が見応えあるが、レズプレイ、自傷行為とNGなしの体当たり演技で女王を虜にするアビゲイルに軍配があがるのは自然の成り行きであった。

底辺から成り上がるアビゲイルを、最初は応援する人が多いと思うのだが、権力を得て不自由ない生活を送れるようになると傲慢で奔放な本性を現し「推し」の偶像をいとも容易く破壊するのはランティモス監督らしい所業。

ラストの、棒立ちのアン女王と、その脚を揉むアビゲイルの空虚な表情の交互アップに、ウサギ(アン女王の子供代わり)の群れの映像がオーバーラップするのは虚しさにシュールが加味された独特のラストシーン。(効果的なのかはよくわからん)

面白くはあったが、『聖なる鹿殺し』のゾクゾクする感じは超えて来なかったかな。
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