ミサホ

女王陛下のお気に入りのミサホのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.0
ジャケのピンク色がいいですね。ひとくちにピンクと言っても、青寄りとか黄色寄りのどっちかでさまざまな風合いになりますね。

本作の内容は、そのピンク色で言えば、とんがった青寄りのどぎついピンクなのです。それでもジャケの色がサーモンに近い、どっちかというと“桃色”的なのは、愛憎の“愛”の方を前面に出したかったからかな…と勝手な解釈をしてみました。

英国はフランスとの戦争真っ只中。
それをよそにアン女王を中心とした宮廷内の面々は、欲に溺れて享楽に浸る。

その対比が興味深い。

見てる分には、うわ〜とか、へぇ〜とか興味本位で見てしまうけど、落ち着いて考えてみると、本当にくだらない。貴族と庶民の格差よ

オリヴィア・コールマンの女官に支配された情けない女王っぷりは見事だった。でも、観進めていくと、誰しもが誰かに支配されている。完全に優位に立っている者などいない。

三人の女の愛のもつれ。

急速に女王に近付くエマ・ストーンのしたたかさ。ひとつひとつの表情は、ひくてあまたの女優らしい上手さ。特に女官のサラ(レイチェル・ワイズ」がアン女王に宛てた最後の手紙のシーン。灰になるそれを一暼する表情が良かった。

女性が中心になっているドラマだけど、中盤の男たちの馬鹿げた遊び…あれなに〜?面食らったよね。ヒマかよ〜!って多分めっちゃ暇なんだろね。

そんな男性の愚かさと、女性の愚かさのどちらもも描くことで、性差で何かを比べるのではなく、あくまで“人間”で捉えて議論してこうぜ…っていっているようにも見える。

そしてレイチェル・ワイズ!

久しぶりに見た気がするけど、アン女王との秘密の関係を持つ女官役。威圧的で宮廷内の影の支配者。後にエマにその地位をおびやかされるけど、女王を支えながら(利用もしてるのかな)政治に絡む強さと嫉妬に苦しむ姿の相反する感情を上手く表現してた。

女優は三人ともすっぴんだったかな。

撮影手法もカメラをぐるっと回したり、魚眼レンズみたいな構図だったりと躍動感を感じて面白かったな。

三人の愛憎と退廃的な貴族の
美術も見事だった。
ジェンダーを強調しているようで、
それに囚われない自由さも感じた。
ミサホ

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