じぇれ

女王陛下のお気に入りのじぇれのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.0
【女優3人の怪演に笑って震える毒笑劇】

女王アンを巧みに操り、国を思いのままに支配していたレディ・サラ。しかし、2人の前に現れたアビゲイルが、あの手この手で女王の”お気に入り”になっていき......

いやぁ、黒い! 面白い! 史実を基にした歴史劇のはずなのに、誰一人美化せず、徹底的に毒っ気たっぷりに人間の醜さや愚かさを見せつけてきます。

監督はヨルゴス・ランティモス。この企画が彼に持ち込まれたのは、『籠の中の乙女』でカンヌ国際映画祭で脚光を浴びた直後とのこと。なるほど、2作には共通項があります。
それは、ある価値観に縛られていた無知な人間が、新しい価値観と出会い変貌していくこと。
ヨルゴス自らリライトに参加したからかもしれませんが、メジャーシーンで撮る作品としては、彼にピッタリの題材です。結果、笑って震える異色の重層的な人間ドラマが完成。ひょっとしたらアカデミー作品賞を獲っちゃうかもしれませんよ。

また、2人の悪女に翻弄されていく女王アンを、オリヴィア・コールマンが多面的に演じているのですが、これがまた凄まじい! アカデミー主演女優賞を獲得するに値する名演です。
(余談ですが、オリヴィアは本当は助演で、エマ・ストーン演じるアビゲイルこそが主人公だと、私は考えています。脚本の構造的には、ってことですが)

とまぁ、私にとっては大満足の120分でした。ともすれば、コスチューム時代ものだということで、身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。いやいや、ご安心ください。肩の力を抜いて、気軽に笑っていればいいんです。
誤解を恐れずに例えれば、構造は『志村けんのバカ殿様』みたいなもの。バカ殿の代わりに政治を行う桑マン爺を蹴落とすために、あの手この手でバカ殿の気を惹こうとする磯山さやか......まぁ、こんな感じの物語です(笑)
それでいて、ラストにはこれが現代の私たちの物語だと気付き、ぞっとするでしょう。

『ROMA』をアカデミー会員がどう扱うかにもよりますが、本作はおそらくオスカーを大量獲得するはず。ぜひ映画館でお楽しみください。ただし、結構お下劣なのでごめんあそばせ!
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