三隅炎雄

明日は明日の風が吹くの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

明日は明日の風が吹く(1958年製作の映画)
4.0
やくざの親分の家に生まれた三兄弟、それぞれの苦悩と再出発を描く。一家を継いだものの生来気弱で風下に立つことしか出来ない金子信雄、就職はしたが家系故に仕事と恋に躓きドロップアウトする血の気の多い石原裕次郎、自分の父を殺した侠客の娘を愛してしまう音楽評論家志望の青山恭二。この兄弟の物語を、井上梅次が理想主義的なアメリカ映画のうつわを巧みに使って、異色のホームドラマに仕上げた。ヒューマンな着地点がいい。

金子信雄・大坂志郎・植村謙二郎の三人がとりわけ心に残る。自分には向かぬ親分稼業を継いで終始浮かぬ顔の金子信雄、弟の裕次郎に俺が替わってやらあと言われ、それは俺だって分かってるさと心で思う切なさ苦さ。大坂と植村、年を取り一線を退いた侠客二人が再会するくだりの枯れた凄味、名演技もそうだが井上梅次のここでの名演出を見て欲しい。他にも二本柳寛、高野由美と脇が充実して奥行きがある。田端義夫の愉快な演技も見逃せない。
三隅炎雄

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