Yurari

ザ・スクエア 思いやりの聖域のYurariのレビュー・感想・評価

4.0
現代美術館のキュレーター、クリスティアン。4m四方の枠の中では誰もが平等の権利と義務を持つ、というコンセプトの参加型アートを企画する。
企画展のPRを考える最中、クリスティアンは人助けをしたつもりがスリに遭い、携帯と財布を盗まれる。GPS機能を使ってスマホの場所がとあるアパートであることを突き止め、部下と冗談まじりに話した脅迫状ばら撒き作戦を実行し、トラブルを招く。さらに、企画展のPRも炎上し、追い詰められていくクリスティアンー。



****

あ〜、こういうシーンあるよね、分かる分かる…という感じで、鑑賞前に期待したほどの衝撃は受けなかった。しかし、自分がいかに枠にはまった考え方をしているかに気付かされる、優れた作品だった。

スクエアの中では人々は平等な権利と義務を持つ、というのは、スクエア外(=我々が生きている現実)ではそうではないって事だよな〜。権利だけでなく義務も入れているところが重要だと感じた。義務を果たさずに権利だけ主張する人への皮肉だろうか。

クリスティアンは善人でも悪人でもないところが実にリアル。ファストフード店ではチキンサンドをたかられても嫌な顔をせずに奢るし(玉ねぎ抜きにはしなかったけど)、案外いい奴じゃないかと思わせるが、自分が配ったビラのせいで両親に怒られた少年に対する対応は酷かった。一言謝れば良いのに。

印象に残ったのはアーティストの対談シーン。
病気のため不謹慎な発言(ここには書けない内容)を繰り返す観客。その妻が

「夫がすみません、病気の発作で…」

と弁解。普通退席させるでしょ〜。奥さんもどうかしてるわ。。と思いながら観ていたが、他の観客が

「皆さん、怒らないであげて。彼は神経症の病を患っているんです。少し寛容になりましょう」

と言った。このセリフで、あ…私心が狭かったかしら…と気まずくなった😓

この映画の見どころであろうモンキーマンのシーン。
自分があの場にいたら、あれ、これってパフォーマンス内の出来事?それとも非常事態?どっち?と考えて身動きが取れなかったかもしれない。そう考えると妙な気まずさを感じる。
パフォーマンス中の出来事だし、絡まれている人たちももしかしてサクラ?とか色々考えそう。そういえば、冒頭のスリシーンはおそらく全員スリの仲間で、ある意味サクラだったし、、
不測の事態が起こったときに、反射的に善と思われる行動ができるかどうか…。自信を持ってYESと言えないだけにず〜んとくる重さを感じる。

記者のアンは完全に地雷女だった。こればっかりは、クリスティアン、ご愁傷様…と言うしかない。使用済みのコンドームを奪い合うシーンは恐怖だった…。あれを使って妊娠した、と言ってクリスティアンを強請るかと思ったがそれはなくて安心😅

ラストは正直、え、これで終わり?と思ったものの、一つ一つのシーンが印象的で、じわじわくる作品。よく分からなかったのは、アンのペット?のゴリラと、クリスティアンの娘のチアダンスのシーンくらい。これ以外は、全てに意味があるように感じた。
Yurari

Yurari