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素敵なダイナマイトスキャンダルの010101010101010のレビュー・感想・評価

3.5
猥雑な昭和後期の空気。細部のこだわりも楽しめて、それだけでエンタメ作品としては良作なのだが、しかし幼少期にダイナマイト心中で吹っ飛んだ母親の存在を抜きにしてはならない作品でもある。

倫理の底が抜けてしまったような母親の行為と、彼女が最後の晩に子供らに見せた、夢幻のような表情。
自らの中で、引き受けようもない、解決のしようもないほどの母親の存在、行為が、主人公の人生の底辺には、生涯、拭い難くあるのだろう。
破天荒でぶっ飛んだ主人公の生き方は、文字通りダイナマイトでぶっ飛んだ母親には到底追いつくはずもないが、しかしそうせざるをえない、そうならざるをえない、どうしてもそちら側に引っ張られてしまうような、そんな業のようなものを感じるのだった。


さて、主人公役の柄本佑はもちろん良いのだが、それより何より、前田敦子の醸し出す圧倒的な昭和感…、大根なのが何とも言えない芳ばしい味わいで、実に稀有な女優だ。すごいの一言。
峯田和伸も芳ばしくてよかった。
エロカメラマン(アラーキー)役の菊地成孔がまたハマってて笑ってしまった(「神様に丸見えだよ」っていう台詞がサイコーでした笑)。

歩き方の姿勢とかでも、昭和感を感じるところがあって、この映画のこだわり、好きだなぁ、と。
キャバレー?に入ったばかりの女の子がすぐに図太い女になってるのも。

しかし一点、気になってしまったのが、母親の着物、きれいすぎやしないか?というところ。
そんなにお金なさそうな家なのに。子供の頃の思い出によって美化されてる、って解釈もできるんだけど、尾野真千子なら、もっと「普通」の着物でも魅力や色気が出せたと思ったり。