misuzu

ライト・オブ・マイ・ライフのmisuzuのレビュー・感想・評価

3.7
女性のみが感染し死に至るウイルスのパンデミックから10年後。
女性達はほぼ絶滅し、噂ではわずかに生き残った女性達はシェルターのような施設で匿われ暮らしているという。
その世界で生きる父と11才の娘・ラグの物語。
女性狩りの危険を避け、出会う人にはラグを息子と偽り移動生活を続ける2人。
父の祖父母の家を目指すが、そこは数年前に廃墟となりすでに他の住人が暮らしていた…。

ケイシー・アフレックが監督、脚本、製作、主演の4役を務めた本作。
父と子供時代の終わりを迎えようとしている娘との親子の絆、父とウイルスで亡くなった妻(ラグの母)との愛が描かれた非常に静謐な作品だった。
冒頭でノアの方舟の話をしたり、登場人物の中に敬虔なクリスチャンが出てきたり宗教的なものも感じさせる。
物語に合わせたような宗教画を思わせる映像も美しく、また明暗のコントラストを多用している場面はカラヴァッジョやラ・トゥールの絵画のようだった。

激変した世界の中で生きる登場人物達は今のコロナ禍と重なって見えるところもあり、彼らのセリフに心を動かされることもしばしば。

俳優としてだけでなく、監督としてのケイシーの才能も堪能できる一作。
日本では小規模公開のようだけれど、できるだけたくさんの映画ファンにケイシーの繊細な世界観に触れてほしいと思った。

043 / 2020年
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