『ぼくのなかの夜と朝』や『富士山観測所』も見れた。柳澤さんの映画を観ていると、ジョン・フォードの映画を思う。とにかく映っている人たちが、惚れてしまうほど生き生き、輝いているのだ。障害を持っている、とかそうした問題を憂う前に、彼らの魅力にまいってしまう、それが柳澤マジックなのでは。映画はどうしたら、この世を、ロクでもないこの世を愛することができるか、そこに力量が賭けられていると、ますます感じる今日この頃だ。

音響設計、大野松雄。障害児の声が前衛音楽としてアレンジされる。元々3時間あったらしいけど、カットして2時間。

現場で生起する音や少年たちの声をマスクする劇伴使い、ナレーションによる「代弁」への依存など気に入らない点はあるものの、まあ面白かった。
病院の施設内の禍々しさがどえらい事になっている。何度か映る、施設の入り口と病棟を繋ぐ廊下の不穏さが尋常でない。あと、少年たちは生活空間の至る所に落書きをしているのだが、それがいわゆる子供の落書きっぽくはなく、妙に規則的で呪詛みたいなのも異様。落書き少年があたかも自分で自分に呪いをかけているようで、不気味なのであった……。
室内のシーンがとても重苦しい一方、川辺における岩運びのシークエンスは、晴れやかに躍動していて心が和んだ。少年たちの顔貌が良い。
療育メソッドが確率されてない中、試行錯誤で対応する職員さんたちの気概には感服した。ラストで明かされる「平均勤続年数2年」はビックリだけどさもありなん。燃え尽きそう。
この前に観た『ぼくの中の夜と朝』が酷すぎたので、こちらが楽しめてホッとする。良かった。