みきちゃ

さよなら、僕のマンハッタンのみきちゃのレビュー・感想・評価

4.4
"Congratulations, Thomas! Your world is becoming contextual!"

ニューヨークはマンハッタンのロウアーイーストサイドに住む青年、トーマス。なかなか就職せず、たまにかてきょのバイトをして、時々ミミとデートするくらいの日々。どうやら子供と大人の狭間で若干こじらせ気味らしいトーマスの日常に変化をもたらすことになる二つの出会い。予感ありつつも泣いてしまった。良かった。ニューヨークの各地区の使い方。使用楽曲との繋がり。ほんと良かった。
 
トーマスは、“トム”じゃなくて“トミー”でもなくて、こだわりの“トーマス”やから。本人的にはもう大人やねんもんなあ。

ミミから見たトーマスがちょっとつまんないのはわかるねん。わかるねんけどなぁ。


こっからはたぶんネタバレ
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大人には大人の事情がある。事情くらい誰にでもあると言われればそれまで。でも、世界の白と黒は、幼い時ほどにハッキリしていて、徐々に物事は複雑化して、二極程度にパキッとは分けられないことが増え、グレーな曖昧ゾーンが膨らんでいく。何を呑み込み、何に声をあげ、どこで出しゃばり、どこで引くのか。俯瞰的に考えながら取捨選択を繰り返して、なるべく全方位的に最良を選びとろうと尽力するような大人であってほしい。

あからさまに過保護にされてなくても、子供はやはり守られているんだろう。親心が伝わっていようがいまいが、子供は親の愛情や思いやりから逃れられないってことなんだろう。

「Let life take over, find a window and pounce.」というW.Fからトーマスへの指南の言葉。W.Fは面白いメンターやった。「They (dramas) play in the least expected places, so get ready.」とか言ってくれる大人めっちゃ良い。

有名歌手の知らない楽曲がたくさん使われてて、聴いてると登場人物の名前が歌詞になぞらえてあると分かった。きっと歌ありきの脚本やってんなあ。マーク・ウェブ監督、凝るなあ。ロブ・シモンセンのスコアもすっごく素敵。

ニューヨークの各地区がメタファーになってたぽくて、監督まじ凝ってる!とときめいた。"マンハッタン"住みであることは一つのステータスで、ドラマ「ゴシップガール」でもわかるように特に“アッパーイーストサイド”には社会的に成功した裕福な人々が住んでいる。トーマスは父親の成功と富への反発心から実家を出て“ロウワーイーストサイド”に住むことで静かな嫌がらせをしているけれど、しょせん"マンハッタン"を出てはいない中途半端ボーイ。高嶺の花的なジョハンナは高級地区"ソーホー"に住んでいて、W.F.の本拠地は"ブルックリン"。

ニューヨーク舞台でシンシア・ニクソンがでてくると「セックスアンドザシティ!!」ってならざるを得ない。ここもたぶん監督の凝り。彼女がミランダ役のときに、すったもんだのすえに腹をくくってスティーヴと結婚して、あんなにも嫌がってたブルックリンに移り住み、家庭を持ってすっかり落ち着いてる人々の仲間入りを果たしてた流れがよぎる。近くて遠い、ブルックリン。

このお母さんにとって人生とは「It's just this perpetual cycle of expectations and disappointments.」であり、「The furthest distance in the world is between how it is and how you thought it was gonna be.」というのがズシンときた。ザ・憂鬱。
 
Pounceしたい母は、まず父がPounceするのを待っているし、Pounce出来てないのはトーマスがお子さんすぎるからで、トーマスには何も見えてなくて。結局、トーマスがPounceしてみて、見えている泥沼へ自ら勇み足ではまり、自力で抜け出せるはずもなく、完全に間違えたかと思いきや、まさかのそんなハッピーなエンド。
 
マイルズ・テラー降板からの、カラム・ターナー。青臭くてピュアな雰囲気を醸さないといけないこの役、どちらがやっても違和感なくぴったりやんなぁ。
 
そこいらのおっちゃんと兄ちゃんの世間話のはずが高尚な引用だらけで語彙力も高すぎてよく分かりません!と思ったところで見るのやめかけてたのあぶない。セーフ。

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食卓での会話を思い返してる。この邦題、最初感じたほどズレてはないかも。
みきちゃ

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