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トリプルXのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

トリプルX(2002年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ザンダー・ケイジはエクストリームスポーツのエキスパート。違法ビデオの撮影のために上院議員の車を盗んで乗り回した上に橋から落として壊し、その腕を見込まれてアメリカ国家安全保障局NSAのギボンズから罪を見逃す代わりにエージェントになるよう命令される。

劇場公開時以来の再鑑賞。
ワイルドな主人公がさまざまなエクストリームスポーツの技を披露する、一風変わったスパイアクションの佳作。
007のようなキザでスマートな過去のスパイ映画からの脱却を目指しているのは明白で、ワルにはワルを当てがう発想が面白い。

冒頭の車両強盗のアクションも破天荒だが、NSAのギボンズが民間人の中からエージェントになる素質がある人間を選抜するための試験もかなり破天荒。
パーティーを軍人が強襲し、ザンダーを眠らせた上、コーヒーショップの強盗現場でテストする。
突然の状況にも関わらず、持ち前の観察眼でエックスは冷静に対処し、強盗を取り押さえるのがクール。
「ダーティーハリー」シリーズのオープニングのようである。
次いで、無理矢理コロンビアの麻薬地帯にザンダーを投入。
そこで政府軍のヘリ爆撃を受けるが、バイクを調達して追手を振り切り、生き残ったところでギボンズ「合格だ」といわれ、エージェントとして働くよう勧められる。

ザンダーが政府のために働くのはまっぴらごめんだと拒否するのも無理はない。
いきなり戦場に放り込むなんて殺す気か?と責めたいくらいだ。
しかし、罪を帳消しにする条件にザンダーは渋々承諾する。
せめて情報を掴んでくるだけでもいいと、犯罪者を捨て駒に使う発想は昔からあるが、そんなスーサイドミッションにザンダーは黙って従うタマではない。
アドレナリン・ジャンキーでマッチョな脳筋野郎と見せかけて、割と頭が良くて抜け目がない、強かなキャラクターなのは面白い。
後のヴィン・ディーゼルに共通するキャラクターでもあるが、この作品で確立されたと言ってもいいだろう。
もう「ワイルド・スピード」シリーズは、この作品の方向に引っ張られ、ヴィン・ディーゼル率いる車泥棒のチームがいつの間にか、世界を救うスパイになってしまっている。

ザンダーはチェコの犯罪組織「アナーキー99」に潜入し、化学兵器をめぐる陰謀と対決することに。
ボスのヨーギが行っていたのはロシアの科学者を使った毒ガスの研究。
ヨーギはその毒ガスを使って世界の都市を攻撃しようと考えていた。

協力する地元警察を撃って、仲間になったはいいが、惚れてしまった女性はロシアのエージェントで、彼女を追ううちに怪しい行動をして、すぐ身分がバレるザンダーが間抜けである。
毒ガスが完成すると、ヨーギは口封じのために雇っていた科学者を毒ガスで皆殺しにし、自動で動く船は毒ガスをばらまくためにプラハへ向かってしまう。
ヨーギを倒し、女性を守りつつ、車で毒ガス付きの船を追い、発射ギリギリのところで船を沈め、ザンダーは世界を救う。

低空でのスカイダイブ、オフロードバイクによる柵越えや屋根を伝う大ジャンプ。
街中で鉄板をスケートボード代わりに使ったり、雪山の雪崩の中でスノーボード敵とで対決するなど、エクストリームスポーツを使ったスタントマンによる過激なアクションのアイデアが満載。
CGによるアクションはまだまだ黎明期であり、本物の生身のスタントは大変見応えがある。

しかしながら、女にモテて(弱くて)、車やガジェットを駆使して、テロリストから世界を救うのは結局007と同じ展開なのが残念。
銃や兵器など触らないとか、女は邪魔だとか、誰も信用しないとか、頑固なポリシーでもあれば差別化できたかもしれない。

21世紀にもなって、ムキムキの肉体派一枚看板は辛いということか?
続編では主役が交代してしまうし、第3作では「ワイルド・スピード」並みにアクション俳優の共演となって、影が薄くなってしまう。
とはいえ、エンタメとしてはエクストリームスポーツを使ったアクションが面白い。
そこだけは画期的であったことは確かだ。

一度主役は交代したので、もうヴィン・ディーゼルでなくとも良いし、エクストリームスポーツが真面目なオリンピック競技となった今、別に主役はワルでなくとも良いので、エクストリームスポーツを活かした生身のアクション映画を見たいものである。
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