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アルテミス、移り気なこころのsonozyのレビュー・感想・評価

4.5
ギリシャ神話の処女神アルテミスが現代社会に舞い降りた?

冒頭は監督が登場し、インタビューを受けてる体で進行。
私はすべてのキャラクターを熟知する全能のナレーターですと語り、その後も随所で登場する。

アルテミスはフランス北西部のカーン大学で文学を学ぶ学生で、ベビーシッターのアルバイトもしている。
人付き合いが苦手で部屋のソファにいるのが好き。壁にはミュシャのアルテミスの絵、そして猫が一匹。
父ゼウス、双子のアポロとはしばらく会っていないし、母については顔も知らない。

ある日、アルテミスは学食で一人席につくと、隣で男子二人と会話に盛り上がる、アルテミスとは真逆なキャラのカリーの話が耳に入り、カリーが住む部屋を探していることを知る。
隣にいる監督の言葉に刺激され、勇気を出して、ルームシェアする人を求めてると伝えるアルテミス。
カリーは部屋を見学に来て気に入り、2人の共同生活が始まる。

カリーはまったり部屋にいたいアルテミスをけしかけて、ブルゴーニュの方へロードトリップへ出かける二人。
男大好きカリーは途中立ち寄ったピザ屋の兄ちゃんを誘おうと、乗り気のしないアルテミスにメモを書かせてテイクアウトのオーダー時に渡す。
ピザを受け取りに行くと、その男フェルナンドから、今夜友人が小さなライブに出るから来てと返事のメモが。

気分盛り上がるカリーに対して、アルテミスは何やら苛立ったムードで、途中で車を停めると、森を抜け、誰もいない海岸まで行って持参したテントを張り、ピザを食べながら、カリーの質問(過去の恋バナ)に答える。

この後、アルテミスがどこかへ消えてしまい、残されたカリーに、ここはキャンプ禁止だぞと二人の警官がやってきてのあれこれや、夜のライブの後のパーティーで、ギタリストといい感じになるカリー、ピザ屋のフェルナンドにアプローチされるアルテミスのあれこれがあるんですが、ここでアルテミスの魔術が使われます。(カミナリを落とす/人を鹿に変身させる)

そして、ラストには、雪山での父ゼウスやアポロとの回想シーン。(全編白黒ですがここだけカラーになります)
ここで何と日本のテレビアニメ「魔法のプリンセス ミンキーモモ(1982/1991)※海外では"GIGI"という名前」がTVで流れてます。
https://youtu.be/FofrcLmi0Ac

アルテミスは修士論文のテーマを「ハワード・ホークスの作品における女性のパワーと決断力」と決めたという話と併せて、『三つ数えろ』のハンフリー・ボガートとローレン・バコールのシーンなどの後、部屋に戻ったカリーが、アルテミスが寝ている隣に寝るというほっこりラスト。

現実と寓話の融合。スーパー8によるスモーキーな白黒映像。音楽の使い方。
アルテミスとカリーのキャラクター、二人のロードトリップの不思議でマジカル&コミカルな展開。
監督が低予算で仲間と作った感じも含め、良かったです。

原題『Artémis, coeur d'artichaut』=アルテミス、アーティチョークの心。
"アーティチョークの心"=フランス語の慣用句で"すぐに恋に落ちやすい人"の意味だそうです。
ただ、恋に落ちやすいのはカリーで、処女神アルテミスは男は苦手ですが。。

ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭グランプリ受賞
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