いわゆるしょうもないラブコメか？と思いつつよくよく見ると、ラブコメを否定して自己肯定感を高めるなかなかよくできた話しだった。暇つぶしのつもりで見たがいい意味で裏切られた。
よくいう「テレビの見すぎ」という依存症のような状態の主人公はラブコメ依存症。見た目もふくよかで、ラブコメに支配された頭の中は、どんな局面でもラブコメに当てはめてしまう。仕事をしていても同じ。
しかしラブコメと現実が交錯して、夢のような世界を体験すると、それはそれで自分を否定される。ここは実に矛盾に満ちていて、誰にでもありそうな話しだ。願望が強すぎて、願望に支配されてしまう。これは社会に存在すれば誰にでも経験があることだ。自分で思い描くことと現実は違う。
いろいろなことを”他者”に合わせて生きてきた主人公が最後に自己肯定するまでに至る物語。ずっと好きだった、窓の外眺めている男性が、実は鏡に映る自分を見ていた、というオチはベタだが、二重写しになる社会を暗示させるうまい演出とも言える。
「星の王子さま」ではないが、本当のものはいつも目で見えないのだ。
