ちろる

日本百年のちろるのレビュー・感想・評価

日本百年(1974年製作の映画)
3.8
なんだかすごいものを見てしまった感じ。
分かってはいたけれど、絶え間なく変化していく日本の映像がどこか別の国のもののように思える瞬間もある。
大平洋戦争時代の、テレビ映画放映はもう、あれだな。
北のお隣さんと同じだな。
プロパガンダとして国民を「騙す」ことで映画といえ文化が支配されるのは、製作陣たちにとってなんと辛いことなのだろう。
カメラの裏にあるそんな単なる映画好きたちの気持ちを思うと気が滅入る。

明治から昭和。よくもまぁここまでてんこ盛りに映像が残っていたなと感心する。
写真はよく見るがここまでてんこ盛りに過去の映像を観たことは初めて。

勝った日本しか知らない当時の人たちと、負けた国として生まれてきた私たちとではもう別物なのかもしれない。
怖いもの無しの自信とそこからくるエネルギーが日本を大きく変化させ、同時に崩落させた。
ラストはこれでもかというほどの大平洋戦争よ映像と、怒涛の特攻隊の追突シーンの連続。
制約だらけの、嘘にまみれた世界の次はありのままの飾らない世界。
そうやって何度も繰り返された結果、私たちは自由を手に入れてここにいる。
制約をなくしたことで目的をなくし、国の中でも見ている方向はバラバラな現代を思うと言い知れぬ虚しさを覚える。
戦争のあったあの時代に行きたいわけではないけれど、まだ貧しかった時代の日本に今に無いものをいくつかの魂はこの国に消えてしまったのかもと思ってしまう。
知っているようで知らないことが沢山あって想像以上に希少で勉強になる作品だったので、近代史好きな人にオススメの作品です。
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