ジェイコブ

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結のジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

かつて悪党達による決死隊「スーサイドスクワッド」を結成し、国家を危機から救ったウィラー。彼女は今回新たに、南米にある独裁国家コルト・マルテーゼで極秘に行われる「スターフィッシュ計画」を潰すため、新たに14人の囚人たちを集結させ、2チームに分けて任務にあたらせた。チーム1を指揮するのは、前回の任務で部隊を指揮したリック・フラッグ大佐で、メンバーにはジョーカーと別れたハーレイ・クイン、キャプテンブーメランと、前回同様に個性豊かな悪党達である。ヘリから島に上陸し、任務は計画通り進むかに見えたが、フラッグのチームのメンバーであるブラックガードの裏切りにより、上陸早々軍隊の待ち伏せにあう。結果、チーム1は壊滅し、フラッグ、ハーレイはそれぞれ敵に囚われてしまう。一方その頃、島の別の海岸ではフラッグの戦友であるブラッドスポート率いるチーム2が無事に上陸を果たしていた。チームのメンバーには、平和の使者ピースメーカー、ネズミ使いのラットキャッチャー2、サメ人間のキングシャーク、水玉模様のポルカドットマンの4人。難なく任務を進める彼らに、フラッグとハーレイの救出が命じられる……。
ジェームズ・ガン監督最新作。「スーサイド・スクワッド」の続編。市街戦における「チーム戦」を繰り広げる部隊の中の決死隊と、「任務」を達成する事に重点を置いて描かれた前作のデヴィッド・エアー監督作の前作とは対象的に、本作はメンバーそれぞれの個性をフルに活かしたストーリー展開とバトル、反骨精神剥き出しの決死隊と彼らをあくまでも手駒にせんとするウィラー(政府)との対立構図が描かれている。前作の場合、エアー監督が軍人出身だからこそ、軍隊の動きや銃撃戦のリアルさに細部までこだわっていたこともあり、キャラクターの個性が描ききれなかった(そのため、銃撃戦に関しては、本作よりも前作の方が上回っている)。それに対し、本作は軍隊は脇役として描かれる日本の特撮映画の方式に則っており、怪物や超人が主役の「アメコミ映画」としての色合いを強く打ち出している。またなんと言っても、悪カワヒロインとしての地位を確立したハーレイの描き方が素晴らしい。敵に寝返るかと思いきや呆気なく殺したり、捕まったかと思いきや驚異の身体能力で難なく抜け出したりと、可愛さ、予測不能、ビジュアルどれをとっても本作が随一。細かい部分では、敵の軍隊を指揮しているのが女性の隊長であったり、咳エチケットは大事とフラッグに言わせたりと、監督の世論に対する細かい配慮が見られるのも面白い笑 
ウィラーがピースメーカーを部隊に入れた理由は後半になり明らかとなるのだが、それは「平和」という大義のためであれば不必要な人間や国家は犠牲にしても良いとするウィラーと考えを同じくするからに他ならない。本作では、ウィラーやピースメーカーの掲げる正義の矛盾にも焦点が当てられ、「真の悪人は果たしてヴィランかそれとも国家か?」と正義の意味を観客に問いかけている。
最後に不要で忌み嫌われ存在の代表とも言われるネズミ達を操り、世界を危機から救うのは、「不要な存在などこの世界にはなく、誰だってヒーローになれる」とする監督のメッセージが込められているように思う。それは、はみだし者集団が世界を救う物語「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を作ったジェームズ・ガンだからこそのラストだろう。欲を言えば、ブラッドスポートと娘のタイラの仲直りを見たかったが、「不要な存在」という、ある意味タイムリーな話題に揺れる現代の人々の心に銃弾をぶち込むようなド派手アクションムービー。