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ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結のYYamadaのレビュー・感想・評価

3.8
【DCエクステンデッド・ユニバース】
⑩ザ・スーサイド・スクワッド
 “極”悪党、集結

◆登場ヒーロー
・スーサイド・スクワッド
◆ヴェラン:
・宇宙怪獣スターロ
◆ミッション:
 スターフィッシュ計画の追及
 
〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
ジョーカーと別れて彼氏募集中の身になり、ますますクレイジーになったハーレイ・クインを筆頭に、最強スナイパーのブラッドスポート、虹色のスーツに身を包んだ陰キャのポルカドットマン、平和のためには暴力もいとわないという矛盾な生き様のピース・メイカー、ネズミを操って戦うラットキャッチャー2、そして食欲以外に興味のないキング・シャークという強烈な個性をもった悪党たちが、減刑と引き換えに危険な独裁国家から世界を救うという決死のミッションに挑む…。

〈見処〉
①愛すべきクソやばいヤツら——
・『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』は、2021年に製作されたスーパーヒーロー映画。「DCエクステンデッド・ユニバース」(DCEU)の第10作品。
・本作は「バットマン」や「スーパーマン」を生んだDCコミックスに登場する悪役たちがチームを組んで戦う姿を描いたアクションエンタテインメント。前2作品にて描かれたアンチヒーロー集団「スーサイド・スクワッド」を、マーベル作品『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで大きな成功を収めたジェームズ・ガン監督が新たに描く。
・出演は、前作に続いてハーレイ・クイン役を演じるマーゴット・ロビーほか、イドリス・エルバ、ジョン・シナ、ジョエル・キナマンら。サメの姿をしたキャラクター、キング・シャークの声をシルベスター・スタローンが担当した。

②製作の背景
・本作は、前作『スーサイド・スクワッド』(2016)が公開される前の2016年3月時点にて既に計画化。当初は前作監督デヴィッド・エアーは当初再任される予定だったが、方向性の違いなどから降板。
・ワーナー・ブラザースは、メル・ギブソンやルーベン・フライシャー、ギャヴィン・オコナーらが候補に挙がるが、マーベルスタジオ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 3』の監督から解雇されたばかりだった(後に復帰した)ジェームズ・ガンの登用が決定。
・ガンは1980年代の原作コミックにインスピレーションを求め、2016年の映画の続編ではなく、新しいキャラクターにフォーカスを合わせることにした。
・キャスティングにおいては当初、前作にて、ウィル・スミスが演じたデッドショットをメインキャラクターに据える予定が、スミスのスケジュールの都合で離脱。
・ワーナー・ブラザースとジェームズ・ガン監督は、イドリス・エルバに新しいキャラクター、ブラッドスポートを演じさせ、将来的にスミスがシリーズに戻ってこれるようにした。

③ジェームズ・ガン
・1966年に米国ミズーリ州セントルイスで生まれたジェームズ・ガン。俳優のショーン、俳優で作家のマット、プロデューサーのパトリック、脚本家のブライアンを兄弟に持つ彼は、セントルイス大学で心理学を専攻後、さらにコロンビア大学大学院にて、ライティング・フィクションの修士号を得たほどの高学歴を誇る。
・ガンのキャリア形成は、脚本分野から始まり、初めてのハリウッドのメジャー脚本『スクービー・ドゥー』(2002)に続き、ジョージ・A・ロメロの同名映画リメイク『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)の初稿を手掛けている。
・2006年には監督業に進出。『スリザー』を手掛けた後に、レイン・ウィルソンとエリオット・ペイジ主演のブラック・コメディ『スーパー!』(2010)によって新鋭クリエイターとして頭角を現し、2014年公開の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で監督・脚本に抜擢されると一気に注目される。2014年には第27回東京国際映画祭 審査委員長を務めている。
・順調に思えたジェームズ・ガンのキャリアであるが、左派としてトランプ批判を強めていた彼が、過去の2008年〜12年頃にツイートした小児性愛、レイプ、人種差別、ホロコースト、エイズなどの不謹慎なジョークを右派のコメンテーターからを掘り起こされ、社会問題化。
・2018年7月、ディズニーはガンのTwitterの投稿が不適切であったとして『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』3作目の監督から解雇すると発表。
・ガンは一連のツイートについて謝罪。活動をディズニー/マーベルからワーナー/DCシネマに移り、本作を製作。
・その間に、ディズニーによるガンの解雇に対して、シリーズ1作目から出演しているデイヴ・バウティスタが『ガーディアンズ』第3作にてガンが手掛けたシナリオが使用されない場合の降板を示唆。他の主要キャストであるクリス・プラット、ブラッドリー・クーパー、ゾーイ・サルダナ、ヴィン・ディーゼル、マイケル・ルーカー、カレン・ギランも不謹慎ジョークの内容には共感しないとしながらも、ガンの復帰を求め、公開書簡に署名。ガンの再雇用を求めるオンライン請願サイトには、約35万人の署名が集まり、最終的には解雇から9か月を経た2019年3月にガンが監督として復帰することが決定した。
・既に撮影を終え、2023年5月にシリーズ完結作となる『ガーディアン・オブ・ギャラクシー Vol.3』の公開を待つジェームズ・ガンであるが、2022年10月にワーナー・ブラザース傘下に新設される「DCスタジオ」の共同会長兼CEOに就任することが発表され、DC映画の新リーダーに就任することが決定している。

④結び…本作の見処は?
◎: ポップな音楽とは裏腹に、『デッドプール』シリーズや『ザ・ハンド』(2020)のように予定調和ではないシニカルな脚本が秀逸。ジェームズ・ガンによる、将来的にマーベル映画を駆逐しそうなDCフィルムズを予見させる転換期の作品。
○: DC作品のヒットキャラクターである、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインの存在感を一定に留め、イドリス・エルバ扮する新しいキャラクター、ブラッドスポートをメインに据えていることも、前作との差別化として好感が持てる。
○: 終盤は「怪獣映画」としても堪能したい。
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