MasaichiYaguchi

愛せない息子のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

愛せない息子(2017年製作の映画)
4.0
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017最優秀作品賞を受賞した本作では、血の繋がらない息子とその父との関係を見詰める心の旅が繰り広げられる。
彼らは最近、掛替えのない最愛の存在を失い、そのことで親子関係もギクシャクして、お互い「愛せない」存在になりつつある。
この作品は「愛せない」関係になった親子が向き合い、今後どう進むべきかを旅の中で見出そうとする姿を浮き彫りにする。
父であるヒューティルは養子ダニエルを連れて、ある目的の為に彼らが住んでいるノルウェーからダニエルの母国であるコロンビアに向かう。
北欧人ヒューティルと南米人ダニエルとの関係は、恰も人生満足度(Life Satisfaction)でスイスに次いで第2位のノルウェーと、格差社会で場所によっては治安の悪いコロンビアとの対比のように見える。
ヒューティルは反りが合わないダニエルとの今後を踏まえ、コロンビアの旧友のアシストを受けながらダニエルと関係のある人物を捜し求めていく。
この父親ヒューティル役のクリストッフェル・ヨーネルと養子の息子ダニエル役のクリストッフェル・ベックの演技が素晴らしく、思わず共感して物語に引き込まれてしまう。
果たしてコロンビアの旅を通して父とその「愛せない息子」との関係はどうなるのか?
舞台となる国も設定も違うが、本作は是枝裕和監督の「そして父になる」に相通ずるものがあると思う。
父性をテーマに葛藤や切なさを滲ませながら展開するストーリーからは、貧しさと豊かさ、親子とは、そして人との繋がりとは何かを問い掛けているような気がする。