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バンブルビーのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

バンブルビー(2018年製作の映画)
4.0
ディセプティコンの猛攻により、惑星サイバトロンから一時撤退することを余儀なくされたオートボットたち。辺境の星《地球》に新たな拠点を設けるよう指示を受けた戦士『B-127』は、追手のディセプティコンを迎撃する事に成功したものの、音声機能と記憶セルに深刻なダメージを受けてしまう。


◆ 路線変更したスピンオフ作品

製作総指揮Steven Spielberg、監督Michael Bayという豪華タッグで製作されてきた大人気シリーズ作品の続編。六作目にあたる本作で初めて監督が交代しました。『KUBO 二本の弦の秘密』『コララインとボタンの魔女』を手掛けたアニメーション製作会社ライカのCEOであるTravis Knightが今作の監督を務めます。

トランスフォームシーンにストップモーションアニメの技術が活かされているのか定かではありませんが、エンドロールのアニメーションにはライカっぽさがあったように感じます。

過去の五作品はどれもMichael Bay節を全面に押し出したアクションメインの長尺作品だったので、今作で作風を変えてくれたことは非常に有難い。登場するトランスフォーマーの数は激減しましたが、丁寧なドラマとストーリーテリング。ダークで無機質な作風から一転、どこかハートウォーミングな少女とマシンの心の交流が描かれてることに新鮮な驚きを感じます。

大好きな父親が他界してしまい、母親とも再婚相手の義父とも上手く関係を築くことができないティーンエイジャーのCharlie(Hailee Steinfeld)が今作の主人公。18歳の誕生日、スクラップ置き場に放置されていた黄色いビートルを譲り受けた事から物語がはじまります。

初めて手に入れた念願の愛車が巨大なロボットに変形。怖そうな見た目とは裏腹にオドオドした可愛らしい仕草にCharlieは次第に心を開いていきます。大きくて、優しい、自分だけの特別な友達。思春期の若者の心の成長を描くストーリーにはありがちなマクガフィンですが、まさか『トランスフォーマー』シリーズの作品で青春映画を観られるとは思っていませんでした。


◆ 過去作品とは異なる世界線として

惑星サイバトロンで繰り広げられたオートボットとディセプティコンの戦いは『ダークサイドムーン』のアバンでも『センチネル・プライムが脱出する』カットとして描かれていました。

今作ではオプティマスやバンブルビーがサイバトロンから撤退するシーンが遂に映像化されています。(バンブルビーがサイバトロンにいる頃から車のフォームで登場した事には驚きました。)

同時に、前作までのシリーズ作品(特に前作『最後の騎士王』)で形作られたトランスフォーマーと人間との歴史はガラッと変わっています。今作でバンブルビーが地球にやってきたのは1987年のことでした。前作でバンブルビーは1939年から勃発した第二次世界大戦に連合国側の戦士として参戦していたので、時系列に矛盾が生じています。

監督と共に、作品の世界線も変わっているという事なのでしょうか。たしかにWWIIを経験して敵兵を何人も屠ってきたマシンが相手だったとしたら、繊細な少女が心を開く事はなさそうですが。

前作との矛盾は生じたものの、シリーズ一作目に対するオマージュシーンが散見されたのは面白かった。一作目で冷凍メガトロンを研究していたフーバーダムが出てきたり、地球に飛来したディセプティコンの二体と接触したのがセクターセブンであったり、セクターセブンの中に例のSimonsが居たり。

フーバーダムが建造されていたということは、中には既にメガトロンが居るはずですが(メガトロンに合わせて建造されたダムという設定だったため)生きたディセプティコンと接触した時のセクターセブンの反応にはやや違和感がありました。「どうしても、絶対に、繋がっていて欲しい!」とこだわる程の世界線でもなかったので(暴言)、今作の矛盾点は一切気にせず楽しく視聴しましたが。

今作でM.BayではなくS.Spielbergが『トランスフォーマー』を撮ったらどうなるのか。少女とマシンの交流を通じてその可能性の一端を垣間見ることが出来たような気がしました。個人的はとても良かったと思っています。