イチロヲ

団鬼六 蛇の穴のイチロヲのレビュー・感想・評価

団鬼六 蛇の穴(1983年製作の映画)
4.0
青年実業家(中原潤)と結婚した貞淑な夫人(志摩いずみ)が、夫が雇い入れた調教師(大杉漣)の手により、性倒錯の世界へと落とされてしまう。秘められた欲動の覚醒を描いている、日活ロマンポルノ。鬼プロダクション製作。ロケ地は神奈川県鎌倉市。

セックスに消極的な夫婦が、SM性倒錯という刺激剤を投与する物語。主従逆転のカタルシスは備わっていないが、「性の探求者」としての夫婦像が叙情的に描かれており、「傍から見ると滑稽だけど、当人は超真面目」の法則が働いている。

和服がよく似合う貞節な夫人が、あられもない姿に変身していくときのドキドキ感。自縛女優・花真衣を起用した逆さ宙吊りプレイや、天井の滑車を利用した拘束プレイ、渓谷の橋の上での放置プレイなど、多種多様な秘技が登場する。

夫婦共々、何かしらの性的抑圧を抱えているところが特徴的。性倒錯のエログロナンセンスが、人間のトラウマ克服を促していく、という語り口が面白い。そして、藤井監督特有の「ドラマ停滞を感じせない作劇」が、ポジティブに動いている。
イチロヲ

イチロヲ