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ナインイレヴン 運命を分けた日のTSのレビュー・感想・評価

3.0
【何も知らないという恐怖】70点
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監督:マルティン・ギギ
製作国:アメリカ
ジャンル:スリラー
収録時間:90分
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 いわゆるワンシチュエーションスリラーで、ワールドトレードセンターのエレベーターに閉じ込められた職員たちを描いた作品。作品自体ははっきり言うと地味であり、よくある展開と言わざるを得ないですが、やはり話自体が実話なのでそのリアリティ、恐怖度は倍増します。思えばあれから21年。もう歴史の教科書に載っていても何ら不思議ではなくなった同時多発テロ。今作は2017年に公開されたものなので、類似の作品と比べたらかなり後発なのですが、見て良かったなと思いました。

 あの朝を誰も忘れまい。何が起きたのか誰も理解できず、あわよくばただの事故であってほしいと。でも、二機目が衝突した時は、世界中の誰もが、あの超大国アメリカが攻撃されるということを悟ったことでしょう。今作の良いところは、その悲劇を途中まで主人公たちは一切知り得ないところにあります。ただのエレベータートラブルなのか、それとも。。想像は膨らむばかりで不安しかありません。エレベーターのシステムも足枷となっており、完全にロックされていくのは逆にかなり恐怖を覚えると思います。幸いにも外界との連絡ができたお陰で、その状況を知っていけますが、知った後も余計に怖い。いつこのビルが崩壊するのか誰にもわからないからです。片方のビルが崩壊したことを知った時の絶望感は半端ないでしょう。最早、人を押し退けてでもこのビルから脱出したい。そんなところでしょう。

 残念ながら、途中そんなこと話してる場合ではないだろうという呑気なシーンもありやや中弛みをします。また、特に目新しい展開もないので、映画としては普通くらいにおさまってしまいます。また、9.11を扱った作品は良くも悪くも山のように存在し、9.11といえばこれだ!と言える作品がないのも事実。(個人的にはノーデ兄弟のドキュメンタリーが傑作であるとともにドキュメンタリー映画最高峰なのですが、無名と言わざるを得ない。)
今作もB級映画の域を出ていないのは否めないですが、多角的にこの事件を取り扱おうという姿勢は素晴らしいと思いますし、今後も向き合っていただきたいです。いつの日か、アメリカにとってはトラウマではあるけども、この事件を知れる決定版的な映画が生まれれば幸いだと思います。
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