MasaichiYaguchi

ナインイレヴン 運命を分けた日のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.3
まもなく米同時多発テロ事件発生から16年目を迎える。
この作品は2007年に発表された戯曲をチャーリー・シーンとウーピー・ゴールドバーグをキャストにマルティン・ギギ監督が映画化したもの。
元々の戯曲も「ビルのエレベーターに閉じ込められた5人」の人間ドラマを描いたものだが、映画はそのコンセプトを踏襲しながら、本作と似た設定の作品「エレベーター」「悪夢のエレベーター」のようなソリッド・シチュエーション・サバイバルを繰り広げる。
過去のこれらの作品は、乗り合わせて閉じ込められたエレベーター内で乗客たちの間に疑心暗鬼が生じて、更なるピンチに陥る様が描かれるが、本作の場合、刻一刻とワールドトレードセンタービル崩壊の危機が彼らに迫っていく。
エレベーター内で絶体絶命のピンチに陥るのは、実業家のジェフリーと離婚調停中の妻イブ、バイクメッセンジャーのマイケル、恋人に別れを告げに来たティナ、ビルの保全技術者のエディと、年齢、性別、人種や職業も様々な人々。
彼らは身に突然降り掛かった厄災を嘆きながらも、起こった非常事態を受け留め、益々悪化する状況と戦いながら、一縷の望みを賭けてサバイバルしようとする。
彼らのサバイバルを見守るオペレーターセンター職員メッツィーをウーピー・ゴールドバーグが流石の存在感で演じている。
アメリカはトランプ政権なってから、人種や宗教、貧富の差による差別が酷くなったように思うが、この作品は「9/11」のアメリカの最大の危機に対して、人々が様々な違いを乗り越えて一丸となったことを、エレベーター内の人間ドラマを通して思い出させようとしていると思う。