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ナインイレヴン 運命を分けた日のりのレビュー・感想・評価

2.4
本作は世界同時多発テロを舞台にした映画である。旅客機の衝突によりエレベーターに閉じ込められた男女数人の様子を描いている。時折、当時の映像が流れてくるため、緊迫感がこれでもかと伝わってくる。
エレベーター内での会話が自己紹介や恋愛模様など下らなさを感じさせるものだが、途中であることに気づいた。つまり、このエレベーターはアメリカ社会の縮図であるということである。そこに居る人は社会階層がバラバラでおり、かなりの格差を感じた。アメリカといえば格差社会として名高いが、経済格差や健康格差、美醜格差が見られた。また、そこに人種差別主義者が登場したのも面白い。なぜなら、このテロ自体が人種による分断を強固にしたものであり、映画においてそれを風刺しているからである。
このようなマクロ(外の社会)とミクロ(エレベーター)の往還は『【リミット】』を思い出させる。この映画も密室に閉じ込められた男が外部と連絡を取って脱出しようとする作品であった。また、エレベーターに閉じ込める作品は『Devil』も採用している。これはホラー映画では異色の舞台ではあるものの非常に面白かった。
以上のような、つまり閉鎖空間に閉じ込められる展開はホラーやスリラーでよく見られるが、例えば『Saw』や『cabe』など。このように実在の大事件ではあまり使用されない。というのも、事件自体に焦点を当てた方が面白く作れるから。そのため、どうしてエレベーター内に着目をしたのか、その真意が汲み取れなかった。
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