たにたに

希望のかなたのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

希望のかなた(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

【希望】2023年6本目

シリア難民であるカーリドを主人公に、ヨーロッパにおける難民問題に切り込んだ一作。

アキ・カウリスマキ監督の作品は初見となりましたが、芸術性に富んだシュールな笑いの中に、厳しい社会問題を取り入れていくアプローチをしており、かなり難しいことをこなしているなという印象でした。


いまだ内戦が続くシリアでは、日々空爆に侵され、避難生活を余儀なくされています。偶然にもフィンランド行きの船に逃げ込んだ彼は、難民申請の受諾を求めるために警察へ行きます。また、離れ離れになった妹を探すためにも警察の協力は必要でした。

しかし、難民を受け入れがたしとする自警団の存在や、真実から目を背き申請の受諾を拒否され強制送還の決議を受けてしまうなど、辛い現実があり、彼は逃げ出し、行くあてもなくゴミ捨て場に寝ているところを、レストランの経営者に拾われます。

そこで働く従業員たちは彼の境遇を理解し、手を差し伸べる存在であったと同時に、対等な立場で彼を認めているように感じました。
そもそも彼らは、カーリドが何者かということに興味がないのでしょう。レストランの働きぶりもやる気など感じず、今生きる金さえあれば良しとする感じ。しかし何故か客は絶えない妙な安心感を漂わせているのです。


難民を受け入れることは確かに国際問題として、各国の課題となりうる重要問題です。受け入れるべきか、拒否するか、の2択で考えてしまうと、拒否するという批判的なアプローチをとってしまう場面が増えるでしょう。
しかし、調和を考えることは不可能でしょうか。


流行りに乗じて寿司レストランを始めたものの、内装も、材料の在庫状況も、わさびのバランスも全く上手くできていない。
新しいことを受け入れる時には、そのバランスに目を向ける課題が存在します。

結局ミートボールと酒のレストランに落ち着くわけですが、これでは旧態依然な訳ですね。

これが今の国家なわけであります。

最後、自警団に刺されて、ゆっくりと木の下で太陽を浴びる彼に、我々は手を差し伸べることはできるのでしょうか。

希望はそこにあるのか。
非常に考えさせられます。
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