不在

希望のかなたの不在のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.8
あまりにご都合主義的だと、これを観た誰もが思うだろう。
その通りだ。現実はこんなに上手くいく訳がない。
この映画は幸運にも、親切な善人全員が、難民である主人公へ手を差し伸べられるタイミングに偶然居合わせる事によって成り立っている。
誰か一人、どれか一つズレただけで、結末は大きく変わってしまうのだ。
冒頭で妻の元を去った男がギャンブルに負けていたら、この映画はそこで終わりだ。
一人の難民が当たり前の幸せを掴む為には、こんなにも多くの歯車が完璧に噛み合い、回り続けなければならないのだ。
ただそこに生まれたというだけで、家を破壊され、家族を殺される。
そこから逃げ出したとしても、移民や難民として扱われ、差別を受ける。
彼らはもう何者でもなくなってしまったのだ。
現実はあまりに厳しい。
だがその厳しさにばかり着目しないのがカウリスマキの特長であり、こういった作風だからこそ、人間という存在の逞しさや美しさが強調される。
"カウリスマキ的"でありたいと願うばかりだ。
不在

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