HidekiIshimoto

希望のかなたのHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.5
ドーンとジミヘンで『ル・アーブルの靴みがき』に続き難民問題にユルっと挑むカウリスマキ。ユルいけどシリア難民の主人公に降りかかる不幸は、これまでのカウリスマキが描いてきた不幸と比べても桁違いに重い。けど差し伸べられる善意はそのぶん厚い。「素敵な荷物を運べた。金はいらない」のセリフには泣きましたよ。泣くでしょ。ネオナチの不可解な悪意も過激に描き、ユルいのに過激なカウリスマキ。けどこの静かな過激さには見覚えあり。自分の墓標は「生まれてはみたけれど」にすると宣言してるカウリスマキだった。生みの親としての小津映画も実は静かに過激だったと最近やっとわかった。そんなフィンランド人カウリスマキと響き合ってきたのはアメリカ人ジャームッシュ。で小津が影響受けたのはルビッチだのホークスだのアメリカ人。経済界がグローバルだの言いだす前からの海も国家も超えたグローバル。映画グローバルからはこんな滋味映画が生まれたのに、経済グローバルからはネオコン・ネオリベ・ネオナチが生まれた感。