燕鷲

希望のかなたの燕鷲のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.5
社会の片隅に生きる人々のユーモアとペーソスをヘタウマ調で歌い上げてきたカウリスマキの新境地。

寂れたレストランというお馴染みの舞台で展開される悲喜交々は真骨頂であり、ヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)と仲間たちの醸し出すオフビートな笑いの数々は観る者にささやかな幸福を与えてくれるだろう。

しかし……。

それでも“希望”を描いてみせた前作『ル・アーヴルの靴みがき』から数年。
たった数年の間に、世界は変わった。そんな世界を目の当たりにして、きっとカウリスマキも変わったのだろうと思う。
最新作『希望のかなた』で提示されているのは決して“希望”だけではなかった。

入国管理局でカーリド(シェルワン・ハジ)が難民申請に至るまでの経緯を口にするシークエンスは出色の出来。
相変わらず無駄のないシンプルな作りなのだが、だからこそ“希望”の裏にある“失望”や、難民と呼ばれる人たちに待ち受ける“現実”の過酷さがひしひしと伝わってくる。
喫緊の問題に立ち向かわんとするカウリスマキの真摯な姿勢と強い意思表示が、この“苦味”と終盤のあの衝撃に現れていた。
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