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single mom 優しい家族。 a sweet familyのnanaのレビュー・感想・評価

3.5

「もっと頼って」

日本に実在した貧困家庭を描いた作品。
現代の話です。

外国人の夫と離婚し、ハーフの一人娘エリー(長谷川葉音)と暮らす愛美(内山理名)。
社会の常識に囚われず、エリーは学校に行っていない。
職につかない愛美は娘と共に食べる物にも困る貧困に陥っていた。

娘が可愛くないのか、と言うとそうではない。
どちらかと言えば猫っ可愛がり。
恋人同士のようにイチャイチャ寄り添っている。

行政に相談するが、言う事がズレている。
助けを拒むプライドはあるが、仕事が嫌い。
働こうとしても面接のアポを電話で取ることもしない。
当たり前の頑張り方を知らない人。

なんでこうなんだろう?

…常識を知らない愛美はネグレクトの母親に育てられていた。

負の連鎖

何も教育されていない人が子供を育てる難しさと怖さを、この映画で知った。

どうしてそんな事をしているの?と思うが、知らなければそんなものなのかも知れない。
人との関わり方も甘え方も権利も。

食べ物も底を付き、フラフラになっても、なすすべが無い。
今の日本で。

千葉の事件を思い出した。

当り前が当り前だとわからない人がいる。
それに「普通」の人達が気づければ無くなる悲劇だってある。
拒絶されるのは辛い。
それでも踏み込む親切を持つ難しさ。

この街の諦めない優しさにじんわりした。

「プラモデルの天才」役の木村祐一が素晴らしかった。
エリーを思い、愛美を怒鳴りつけるシーンが胸を打つ。

他人でも、こんなに思ってくれるんだね。

救いがあった映画でした。

愛美役を内山理名がキュートに演じている。
悲壮感溢れるストーリーを、最後まで観られるのはこの人の役作りのおかげだと思った。


※以前、ネグレクトの親に育てられた方の手記を読んだことがあります。
お風呂の入り方も食事の仕方も分からない。
言葉も普通にはいかない。
大きくなって家を出て、知り合った女性と交際し、毎日何度も叱られ生活上の常識とマナーを身に着けたそうです。
食事が温かいものだと初めて知ったそうです。
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