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猫が教えてくれたことのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

猫が教えてくれたこと(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

古くから猫の街として知られるトルコの古都イスタンブール。生まれも育ちも全く違う、7匹の個性豊かな猫を軸に、イスタンブールの人々と猫の幸せな関係をとらえたドキュメンタリーの秀作。

お馴染みの映画評価サイト「Rotten Tomatoes」で、プロの批評家たちから98%の高評価を獲得。
その理由は映画好きに猫好きが多いからではないはずだ。
この映画の猫を通して、「無償の愛」というものを教えられるからだろう。

私は現在の飼い猫を10年以上飼っている。
個人的に思っていることだが、犬は感情表現が豊かで、飼い主など特定の人物への愛情や依存が強いが、猫はとても気まぐれだ。
犬は注いだ分だけの愛情を返してくれるが、猫は始終ベタベタすることは好まず、自分の時間を大事にする。
猫好きの人もまた然りだと思う。

この映画のイスタンブールの人々と猫との付き合い方が、人と人との付き合い方に見えてくるから不思議だ。
束縛せず、依存せず、適度な距離を保って愛情を注ぐことが人間関係はもちろん、世の中を良くするのでは?と思えてくる。

イスタンブールの猫はペットではなく、全て野良。
古くから海洋交易の拠点として栄えたイスタンブールには、東ヨーロッパ、アジア、南アフリカを広範囲に支配したオスマン帝国の船に乗って、世界各地から猫が集まって来たと言われている。

「猫は神の存在を知っているようだが、犬は人間を神と思っている。」
「猫は人間を神の代理人だと思っているからぞんざいに接しない。」

イスラム教徒が大半を占める彼らにとって、猫は神からの使者であり、猫側から見ると、人間は自分たちを地上に送った神の代理人。だからこそ猫は感謝すべき対象なのだ。
決して「見返り」など求めてはいない。

イスタンブール市民の言うことがいちいち哲学的で的を得ている。
「動物を愛せないなら、人間を愛せるはずがない。」
「心を開けば愛は与えられるものさ。」
「愛を持って接すれば、世界は素晴らしく見えるはず。」
「猫は自分に満足している。人間は満足せず常に何かを追い求めている。」
「猫がいるおかげで人間らしさを失わずに済んでいる。」…などなど、まさしく題名通り「猫に教えられる」ことが多い。

登場するそれぞれの猫には、猫との触れ合いの中に生き甲斐を見出している人々がいる。
両者の付かず離れず、それでいて心の何処かで通じ合う関係の、何と心地いいことか。
人間関係もこうありたいと思えてくる。

ドキュメンタリーではあるが、ありがちな社会派の問題提起も無ければ、「事実は小説より奇なり」という驚きもない。
猫好きでなければ眠くなるかもしれない。
また、猫好きにとってはトイレの匂いや多頭飼いの問題などが描かれておらず、多少綺麗事のように見えてしまうのが難点。

しかし、宗教や町の歴史などとは無関係に、相手を尊重する気持ちと「無償の愛」の大切さがひしひしと伝わってくる。
癒される良作である。
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