Mikiyoshi1986

ドグラ・マグラのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ドグラ・マグラ(1988年製作の映画)
4.0
本日3月11日は明治、大正、そして昭和という時代を駆け抜け、日本の文壇に颯爽と現れた不世出の怪奇作家・夢野久作の没後81周年に当たります。

日本三大奇書のひとつに数えられ、それを読んだ者は一度は気が狂うと唱われる久作の代表作「ドグラ・マグラ」

…ブウウーーンンンーーンンン…

10年にも及ぶ創作の果てに完成した大作「ドグラ・マグラ」ですが、
こんな難解かつ多様な解釈の余地を残した迷宮世界なんて、まずは映像化不可能です。
が、しかし!よりによって「薔薇の葬列」の松本俊夫監督が映画化に乗り出し、
その奇怪な世界をまずまずの裁量で映像表現してしまったのが88年に製作された本作…スカラカ、チャカポコ、チャカポコ…。

巻頭歌
胎児よ 胎児よ 何故躍る 母親の心がわかって おそろしいのか

精神病棟で目を覚ました記憶喪失の青年の前に現れる、二人の精神科医・若林教授と正木教授。
徐々に明かされる「呉一郎」なる人物が起こした事件とは…。
その異常な精神世界はまるで香の煙のように浮遊し、夢遊的な映像演出によって深層部へと誘われます。
…胎児の夢、心理遺伝、脳髄と記憶、呉青秀の絵巻物、母親、許嫁モヨ子、父親の正体…。
…ボーン…ボーン…ボーン…
青年と呉一郎の関係性は…。
真相はどこに…。
グルグルと渦巻く困惑の波に呑まれ、幻想と眩惑の嵐の後には奈落へ置き去りにされるラスト…。

…ブーーンンンン…

長年、躁鬱に悩まされた末に自殺した天才落語家・桂枝雀が軽妙な面持ちで正木教授を好演し、
一方の室田日出男は不気味な影を漂わせた若林教授を怪演。

美術は清順美学の傑作「ツィゴイネルワイゼン」を具現化させた功労者・木村威夫が手掛け、大正の妖麗な雰囲気を見事に再現しています。

…ブウウウーーンンーーンンン…。
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986