Eのつく人

南部の唄のEのつく人のレビュー・感想・評価

南部の唄(1946年製作の映画)
4.5
私がこの世で最も愛した映画と言っても過言ではない。これは映画の出来とかそういうことではなくて、私はこの作品のキャラクターからストーリー、音楽まで骨の髄まで好きなだけ。一部の人はこの作品を差別だ奴隷制の美化だと言うけれど、ちゃんと観てんのかなって思う。
物語の舞台は南北戦争後、奴隷解放後の再建時代のアメリカ南部。とある事情で農園にある祖母の家へ行くことになった主人公のジョニーは「こんな家無理。お父さんの所に行きたい!」と言って里帰り半日でアトランタへの家出を決行する。しかしアトランタへ徒歩で行けるわけもなく、途方に暮れて泣いている彼の元にリーマスじいやが現れ、彼を説得する代わりにブレア・ラビットの物語を聞かせる。
このブレア・ラビットの物語を彼が語り始めると、いきなり暗かった世界がアニメーションに彩られ、リーマスおじさん自身が美しいアニメの中で歌い始め、家出をしようと悪態をついているブレア・ラビットと会話をし始めるのである。
しかし、彼の物語を快く思わないジョニーの母親によって現実世界はより暗さを増していく。この母親こそリーマスおじさんを明らかに差別し、彼の文化を真っ向から否定する隠れ差別主義者である。美しいアニメーションと対比するように、当時あった人種差別や階級差別で現実の苦しさ虚しさを描きつつ、物語がそんな世界にもたらす希望を描く。このクソみたいな現実世界を至極見せられた最後に待つハッピーエンドの演出こそ、この作品をディズニーの隠れた名作とする所以なんじゃないかと思う。
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