ターミガン

血染の代紋のターミガンのレビュー・感想・評価

血染の代紋(1970年製作の映画)
3.5
深作欣二監督が『仁義なき戦い』より3年前の1970年に公開した社会派の任侠映画。

実録シリーズではなさそうだが、当時の日本の世相をよく反映させていると思われる。
つまり任侠よりも高度経済成長の渦中に巻き込まれる人々がメインテーマだと伺えた。

舞台は昭和40年の横浜。
コンビナート建設の為に地上げ屋を依頼された某組組長・郡司(菅原文太)が、そのスラム街出身の人間とで板挟みになる……
といった流れ。

脚本面で言えば、仁義なきシリーズよりもバイオレンス描写は少なく、とことん「葛藤」を描いている。
各々の利権が絡むほど問題は複雑化し、どちら側でも葛藤が生じた挙げ句に凄惨な悲劇を生むという深作監督が何に憤り、何を訴えようとしているかがよく分かった気がした。

主演は梅宮辰夫なのだろうか。
物語序盤から終盤まで終始渋くキマっているのは我らが菅原文太だった。
そして鶴田浩二の別格扱いも流石だった。
若かりし頃の小林稔侍も出ていた。

2021年現在の目線で珍妙におもしろかったのは、敵対する大門建設の片桐役を演じた関山耕司の顔面凶器ぶりが、塩見三省とあまりにも似ていたこと。

もちろん塩見三省は今作に出ているわけもないが、アウトレイジビヨンドで見た役柄とそっくり過ぎだったので、関係性をググッてみたら既に同じ事を感じた人は前から多いようで、アンケートブログや感想ブログがわんさか出てきた。

演出面で言えば、深作監督お馴染みの独特なカメラアングルや乱闘シーンでのカメラのブレなど健在だった。
特に、相手方のアジトに乗り込んだシーンで全員を俯瞰で映す為に屋根から見下ろすアングルとか、過去を回想するシーンで写真を使うカットとか、逆に目新しく感じた。

DVDには定番の予告編とフォトギャラリー10枚が収録されていた。
予告編に関しては「こんなシーンは本編に無かったな?」という、いわゆる盛ってる系の予告で逆に興味深かった。