爆裂BOX

オブジェクトの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

オブジェクト(2014年製作の映画)
3.3
田舎町の保安官ポールとニューヨークからやってきた保安官代理のドニーの二人は、馬の失踪や二本足で歩行する謎の生物の足跡など町で続発する奇妙な事態を調べるが…というストーリー。
田舎町に現れる謎の怪物の恐怖を描いたモンスターパニックです。「トランスワールド」のジャック・ヘラーが監督を務めています。
静かな田舎町で謎の生物の足跡が町中に残されたり、馬やペットが失踪したりと怪事件が相次ぎ、町の住民の信頼篤い保安官ポールとニューヨークから来た保安官代理ドニーが調査を進めるうちに謎の怪物の存在に辿り着くという内容です。ですが、バンバン怪物が襲ってくるような内容のモンスターパニック期待するとがっかりすることになると思います。
冒頭で森林伐採を行っている伐採業者二人が襲われるシーンでも怪物の姿はハッキリ映りませんし、以後もチラ見せするだけで本当に終盤になるまでハッキリ姿が画面に映る事はないです。冒頭以外では襲うのも馬やペット、シカなどで、中盤過ぎくらいにハンター三人が襲われるまでは人間の被害は中々でないですね。怪物の正体も最後まではっきり説明されませんね。地元に伝わる昔話に登場する怪物に類似してるようですが…
モンスター物よりも、むしろ、喪失感と罪悪感を抱え、前に進めずにいる男二人の苦悩とまた前に進もうとし始める再生の物語の側面の方が強いですね。ポールは二人いる子供のうち片方を目を離したすきに事故で失いその事でずっと自分を責め続け、初めは支えようとした妻にも距離を置かれています。ドニーの方も相棒を失ったショックでニューヨークを離れ、まだその事を引きずっています。心に傷を負った男二人のドラマが丁寧に描かれてこちらの方が比重が大きいですね。このドラマが怪物と関わりあるかというとそんな事は全然ないんですが。また、町の住民達の日常も描かれますが、台詞はなくとも住民が向ける視線などでどれほどポールが信頼されてるかを感じさせる演出も好きですね。二人に突っかかってくる奴もいるけど悪人はいなくて、最終的に全員で一致団結して立ち向かう展開もいい。
主演のケヴィン・デュラントは脇役が多くて「LOST」の冷酷な傭兵キーミーなど悪役の印象強い人だけど、本作では喪失と痛み抱えた男を好演しており、その哀愁漂う演技は素晴らしかったですね。ドニーを演じたルーカス・ヘッジも同じような痛み抱えて、お互い好意持ってる女性いながらも前に進めず、そしてポールに強い信頼寄せてる事を感じさせる演技も良かったです。ニック・ダミチがバーの店主役でグイグイ前に出て存在示すような演技ではないながらもそれでも渋い存在感見せる所は流石です。
怪物もチラ見せで画面にハッキリ登場しないながら、段々と不穏な雰囲気が高まっていく所は地味ながら好みでした。
終盤の住民達と立て籠もった教会に侵入してきた怪物との死闘は映し方も緊迫感あってモンスター映画らしさも出て来て楽しめました。ここで初めてハッキリ姿見せる怪物は「バイオハザード」のハンターに似てました。CGはチープな感じですね。
ラストはモンスター映画らしいオチになってました。主人公二人頑張ったけど朝までは持たないだろうなぁ…
モンスター映画としては非常に地味で怪物も最後の方までハッキリ姿見せないのでがっかりすると思いますが、傷を抱えた男達のヒューマンドラマとしては実力のある役者陣が主役はってるだけあって最後の方まで退屈せずに見れました。個人的には好きな作品でした。