このレビューはネタバレを含みます
私が知らなかっただけですが「タイムトラベルモノ」からドロップアウトしたように「ループもの」という一大ジャンルが形成されていました。
本作はハンガリー映画ですが、あの不及の名作『決死圏SOS宇宙船』のようにSFでありながらアイディア一発の低予算映画です——と言っても映画自体が安っぽいわけではありません。
そして「ループもの」の特徴なのかもしれませんが、「なぜタイムループしてしまう(できちゃうのか)のか」の合理的説明は完全に省かれています。主人公がやろうと思えばできてしまうのだ——といったところから考えるカテゴリなのです。
本作もそこは踏襲されており、そもそもハンガリー映画だからかどうかは不明ながら、画面のトーンがセピアっぽくて独特の風合いがある。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のように主人公が意識的にループを利用してやり直しを試みる流れですが、本作では主人公のアダムが同棲中の恋人アンナが妊娠した事を怒り、堕胎させようとするところからドラマは始まる。
最初の時点では自分の仕事の邪魔に感じられるアンナを場合によっては棄てようとも、殺してしまおうとも受け取れる冷たさがあるが、何度も別な時間軸でアンナと多面的に接する中で、アンナが裏表なく心からアダムを愛している事を次第に確信してゆく。愛が深まってゆく。
執拗にアダムを追い何度も殺そうとするボスのデシューも死に、おそらくはアダムはアンナと結婚し子を産ませるでしょう。アクションあり、謎解きのような面白さもあり、ハッピーエンドが好印象です。
「アイディアがあれば低予算で撮れる可能性」を見せる部分もあり、学生でも撮れるのではないでしょうか。ただし脚本には周到な作り込みは必要でしょうけど。