もはやタイトルを考えるのすら面倒くさくなったのか、単刀直入「ループ」ってタイトルのループもの。
映画配給会社の担当が仕事するフリをするためなのか、副題として「時に囚われた男」というのが、申し訳なさげに付いている。
「でも、ループ映画って、基本的に、時に囚われてますよね?」
と、もう一人の俺が耳元で囁く。
「その副題、『頭痛が痛い』『食事を食べる』みたいな感じで、表現としてオカシイですよ。ついでに、『月に囚われた男』と、ちょっと被ってますよね」
うーん、確かに、と考えていると、さらに別の俺が割り込んでくる。
「マーケティング予算を与えられなかった映画配給会社が、『ルーパー』とか『月に囚われた男』と間違えてくれるように、涙ぐましい努力で考えたんやろ」
なぜ大阪弁なのかは不明だが、言ってる意味はわかる。
「こんなの、感想書いても、マニアしか興味ないわよ!」
と、女装した俺が「ニャー」となく猫を撫でながら指摘する。
「ワシも若い頃は、お前のように『ループ警察』として、ルールの明確でないループ映画は許せなかったものじゃが、お主も成長したのう」
……なんか書いてて良く分からなくなったのだが、この俺の下手な文章で、この映画の世界観を表現してみたんだけど、伝わっただろうか。
ドラックの運び屋をしているアダムは、妊娠した恋人アンナと共に、ボス・デジューを裏切って雲隠れを企てる。だが、突然、一人で姿を消したアンナを追い、街でようやく彼女を捕まえると「あなたは死んだはずでは?」と奇妙な話をされ、その直後、彼女は車に轢かれてしまう。その後、アンナが手に持ったビデオテープを持って自室へと戻ったアダムは、その映像に、自分が自室でデジューに射殺されるシーンを発見する……という内容。
このループもののミソは、同じ世界線に、自分が複数、登場してくるというところ。カイリー・ミノーグの「Come Into My World」のコンセプトが映画になった感じ。自分が自分の行動に干渉することで、物語は進んでいく。
これ以上書くとネタバレになるので、内容の紹介はココまで。
ループ世界のルール自体は分かりづらいんだけど、主人公の取った選択肢や、終わり方の余韻の残り方も含めて、ループ映画好きとしては、とっても楽しめた。
ちなみにこれ、ハンガリーの映画。ハンガリーの映画というと、救いようのない真っ暗な展開の「サウルの息子」くらいしか観たことなかったけど、こんなエンタメ作品もあるんだなー、と感心。
全編ブダペストでロケしてあって、旧東欧地域ならではの美しい街並みを楽しめる。ただ、「こんな美しい街やで」と、ドヤりたいのか知らないが、やたらめったらドローン撮影を多用してる。
もはや全編ドローン撮影にしてもいいんじゃないかってくらい、要所要所でドローン撮影が出てくるので、2回め鑑賞するなら、ドローン撮影に注目するのも良いかも。
全く映画と関係なく、ブダベストの風景を観てて思い出したんだけど、俺、ブダペストにあるセーチェニ温泉ってサウナに行ったことがある。
ここ、屋外プールが気持ちよくて、オッサンたちがチェスとかしてんだけど、屋内サウナが凄かった。これまで体験したことのない高温。灼熱地獄。入った瞬間「アツゥイ!」って変な声が出て飛び出してしまったサウナは、あとにも先にもココだけ。さすがの地元民も、誰一人、中に入ってなかった。……あれ、何のためにあるんだろう。もしこれを読んでる人で、ブダペスト行く機会あれば体験してみてください。
それにしても、「ループ映画」とか「ゾンビ映画」とか、最近、量産されすぎて、タイトルすら枯渇してんのかね。かといって「残酷で異常」みたいなタイトルにすると叩かれるし。
もうこうなったら、全部あわせて「ループ・オブ・ザ・デッド」ってタイトルで、究極のジャンル映画つくって欲しい。
副題も、ありがちな奴を寄せ集めて「事故物件が見えたら、終わり」とか、そんな感じで。
ポスターのアオリに「全米が泣いた!」って載せて、サメでも書いとけば、filmarksの一部ユーザー(俺)くらい、釣れるんじゃないかなー。
「くだらないこと書いてないで、そろそろ仕事でも見つけてこいや!」
と、現在の俺は、怒り狂った未来の俺に首を絞められて死亡したので、この感想はここでオシマイです!